研究実績の概要 |
最終年度は、次の5つの研究を進めた。 (1) 非鉛極性物質候補として前年度までに合成したAサイトcolumnar秩序型ペロブスカイトCaZV2O6の結晶構造・電子構造について、実験的・計算的に調査した。(2) 新しい強誘電性発現機構を示すCaMnTi2O6について、電子ドープを行うことで新規極性金属の合成を試みた。(3) 非鉛系極性物質候補として前年度より合成に挑戦していたCaMnV2O6について、合成条件の工夫を試みた。(4) Nb系ペロブスカイト強誘電体CuNbO3について、圧力誘起相転移を実験的・計算的に調査した。(5) 過去に合成のみが報告されていたNb系ペロブスカイト強誘電体RbNbO3について、結晶構造・高温相転移を実験的に調査した。
(2), (3)については様々に挑戦したものの目的の物質を得ることが出来なかった。(1), (4), (5)については、下記の結果をそれぞれを論文として報告した。(1) CaZnV2O6が期待していた極性反強磁性絶縁体ではなく、非極性常磁性金属であることを明らかにした。一方、反強磁性転移の近傍にある可能性を示し、ドープ等による相転移を期待している。(4) CuNbO3が35 GPaまで相転移しないことを明らかにした。他の類似結晶構造物質が20 GPa以下で相転移を示すことを踏まえると異例である。CuNbO3の相転移圧力が高い原因がCu-O間の共有結合性にあることを明らかにし、圧力誘起相転移における結合性の重要性を示した。(5) RbNbO3が非鉛圧電体として最も研究されているKNbO3と同じ極性構造をとることを明らかにした。さらに、KNbO3よりも大きい自発分極をRbNbO3が示すことを明らかにした。(1), (4)の結果はInorg. Chem.、(5)の結果はJ. Ceram. Soc. Jpn.に掲載された。
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