本年度は、前年度に開発した解析手法について結果をまとめるとともに、当該手法を使用してこれまでに測定した実験データの再解析を行った。超臨界反応場におけるナノ粒子の核生成と結晶成長をその場観察する手法の開発を目的として、大型放射光施設SPring-8とX線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAにおいてナノ粒子試料の回折実験を行った。 ナノ粒子の構造モデルとデバイの散乱公式を使用した実空間モデリング法により、ナノ粒子の粉末回折データを解析した。モデルに挿入された構造欠陥近傍の原子配列が粉末プロファイルに与える影響を系統的に調べた。検出器の固有ノイズの補正法をこれまでに測定したその場観察実験データに適用し、データのシグナルノイズ比を大幅に改善することができた。補正したデータの再解析から、ナノ粒子のサイズ変化率と水の物性の相関を決定することに成功した。 SPring-8とSACLAにおいてX線回折実験を行った。超臨界ナノ材料合成法の第一人者である東北大学の阿尻雅文教授の研究グループとの共同研究において、SPring-8 BL02B2におけるナノ粒子合成の放射光その場観察実験を行った。直径4 nm以下の微細ナノ粒子から回折データを測定した。SACLA BL2およびSPring-8 BL44B2における国際共同実験に参加した。実験はナノ粒子合成その場観察研究の第一人者であるデンマークオーフス大学のBo Iversen教授の研究グループメンバーと協力して行った。XFEL実験ではリキッドジェット法によりナノ粒子試料からX線散乱データを測定した。放射光実験では、Pair Distribution Function法による構造解析を目的として、ナノ粒子から粉末回折データを測定した。
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