今年度の研究成果は以下となる:1. 全球海洋を7つの海域に分け、それぞれ表層混合層内の物質濃度を制約条件なしにより高精度で復元するために、水温・塩分・圧力・溶存酸素を説明変数とするNeural Network(NN)モデルによる炭酸・栄養塩のパラメタリゼーションを開発した。2. 上記パラメタリゼーションの妥当性を評価するために、南大洋で採取した全無機炭素(DIC)と栄養塩の海水サンプルを測定し、得られたデータを用いて、パラメタリゼーションの精度を検証してきた。3. NNパラメタリゼーションとBiogeochemical Argoフロートを組み合わせるという新しいアイデアにより、現代のSOにおける純海洋生物群集生産(NCP)の詳細な時空間分布を得ることができた。その結果、SOにおける総NCPは4.1 ± 0.3 Pg-C year-1で、これは全球の年間海洋炭素輸出量の40%を占め、SO内部への炭素吸収量は0.6 ± 0.3 Pg-C year-1となった。さらに、SOのNCPは2010年代以降、年率1%程度で著しく減少しており、大気中のCO2増加に対する正のフィードバックとして寄与している可能性が示唆された。4. NNパラメタリゼーションとBGC-Argoを用いて、表層からのSiとNの季節的な輸出フラックスと再供給フラックスの定量化を試み、海洋表層のSiとNの間のデカップリングを直接推定することを試みた。その結果、SOの8:1と大西洋亜寒帯の0.1:1の間で、SiとNの対照的な輸出比(Si/N)を発見した。このような下方への輸出と上方への再供給のアンバランスから、全球海洋におけるSiの南北方向の下降勾配をもたらす表層からのSi除去の主要海域を特定することができる。5. 「3」と「4」の研究成果を学術論文にまとめ、国際誌に投稿した。
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