本年度は、前年度に構築した新規薬物吸収動態予測モデルにより消化管内水分動態変動が及ぼす薬物吸収への影響に関する定量的解析と消化管水分動態に対する浸透圧の影響のモデル化および小児特性解析を試みた。 前年度に構築した新規モデルを用いた解析より、薬物吸収に対する水分動態変動の影響は、その膜透過性に応じて異なることが示された。しかし、機能性タンパク質の基質薬物の場合は、非線形性を示す投与量範囲においては、薬物の膜透過性にかかわらず、水分動態変動の影響を受けることが示された。 次に、消化管内水分動態の制御因子として浸透圧に着目し、消化管内水分量に及ぼす浸透圧の影響のモデル化を目的として、非吸収性化合物(FD-4)および標識水([3H]water)を用いたラットin situ実験により、各浸透圧に調製したmannitol溶液を用いて、見掛けおよび真の水分吸収/分泌挙動を経時的に定量評価した。得られた結果に基づいて、経時的な浸透圧変動に依存した水分吸収/分泌を考慮することで、浸透圧に起因した消化管内水分変動のモデル化に成功した。 一方、小児における浸透圧の感受性が成人と同様であるかは不明である。そこで、溶液浸透圧が消化管水分量に及ぼす影響について小児-成人間の比較検討を試みた。FD-4を含む精製水および高張mannitol溶液を用い、小児および成人モデルとして3週齢および8週齢ラット消化管における水分量をin situ実験により評価した。その結果、精製水および高張mannitol溶液を投与した際、8週齢ラットに比べ3週齢ラットにおいて高い水分吸収性および分泌性が示され、浸透圧に対する感受性には年齢差があることが示唆された。 以上、本検討により得られた知見を統合した数理モデルを用いることで、今後、シロップ剤を含めた小児製剤設計の最適化に貢献できるものと期待される。
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