研究課題/領域番号 |
21J12610
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
石田 幸太郎 岩手大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | フラビウイルス / 複製オルガネラ / ウイルス粒子 |
研究実績の概要 |
フラビウイルスは感染細胞内で複製オルガネラという膜構造体を形成し、そこでウイルスの増殖を効率よく進めている。本研究では、複製オルガネラに集積する因子として同定されたLunaparkについて解析を進めた。Lunaparkを欠損、あるいは過剰発現させた細胞では、ウイルス増殖が抑制されたため、この因子のウイルスの生活環への関与が確認された。Lunapark欠損細胞では、ウイルス複製オルガネラのコンボリューティッドメンブレン (CM) 領域の縮小が確認された。電子線トモグラフィー解析を行い、CM領域の膜構造の詳細な解析を行ったところ、CMは膜が網目様に密な網目様構造と、細長いチューブ状構造の二つの異なる形態から成ることがわかった。また、チューブ状構造と網目様構造は互いに異なる領域に存在することが明らかになった。Lunapark欠損細胞では、チューブ状構造の減少が確認されたことから、Lunaparkはチューブ状構造の形成に関与しウイルス増殖に寄与していると考えられた。 また本研究では、ウイルス粒子分泌の解析も進めた。日本脳炎ウイルスの構造タンパク質であるprMタンパク質とエンベロープタンパク質は、それらのみでサブウイルス粒子 (SVP: sub viral particle) を形成し、細胞外に放出されることが知られている。我々はこのSVPに高感度検出用タグであるHiBiTペプチドを挿入し、分泌されたSVP量を定量する実験系を確立した。加えて、スプリットGFPシステムのGFP11ペプチドを挿入し、細胞内でGFP1-10と共発現させることで、SVPのGFPによるラベリングを行い、非侵襲にてウイルス粒子を可視化するシステムを構築した。さらに、RUSH(retention using selective hooks)システムを用い、GFP11挿入SVPの分泌を同調させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宿主因子Lunaparkのウイルス増殖への関与だけでなく、lunaparkが複製オルガネラの一領域の形成に関わっていることを示した。この研究を通し複製オルガネラのコンボリューティッドメンブレン (CM) 領域の詳細な解析を行った結果、CM内部における形態的差異を見出した。 また、ウイルス粒子の非侵襲ラベリングにも成功し、ウイルス粒子の分泌を同調させたうえでライブイメージングで行うことが可能となった。 以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、複製オルガネラのコンボリューティッドメンブレン (CM) がどのようなメカニズムで形成されるのかを、Lunaparkの解析を含め進める。Lunaparkは小胞体膜折り曲げに関わる因子であり、同様の作用機序を持ちLunaparkと共同して小胞体膜構造の構造変化に携わるAtlastin、Reticulonといった宿主因子群の解析も並行して進める。 また、ウイルス粒子が複製オルガネラ(ER)から出芽しどのような経路をたどり、あるいは宿主因子を利用して細胞外へ分泌されるか検討する。ウイルス粒子表面は糖鎖修飾されることが知られており、それらの修飾や糖鎖認識に関わる因子について解析を進める。
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