本研究は、既存研究で明らかにされていない、航空機の使用年数とライフサイクルに関するモデルを開発し、“航空機の使用年数の延長に伴う旧型機の使用増加と使用年数の短縮に伴う新規機材の使用増加”と“燃費の良い機体導入に伴う費用の増加と燃費向上による燃料費の減少”のトレードオフ関係を環境と経営の両面から明らかにし、航空産業の持続可能な発展に向けた知見を得ることを目的とする。具体的には、航空機の寿命関数と機体のストックフローモデルを用いて、機体の導入・退役サイクルを操作することで、環境面ではライフサイクルCO2排出量の削減、経営面ではコストの削減の影響を考察し、新たな環境・経営評価フレームワークの提案を行う。また、使用年数の変化に加えて航空需要や機体の燃費、使用燃料の変化に関するシナリオ分析を行い、航空部門が掲げる2050年ネッ トゼロエミッション目標を達成するための具体的な方策を明らかにする。 航空機の寿命関数と機体のストックフローモデルを用いて、新型コロナウイルスによる航空需要減少を考慮した航空産業の将来モデルを構築し、2050年ネットゼロエミッションを達成するために、航空部門がどのような対策を、どれだけ実施する必要があるのかを定量的に分析する。 分析結果から、2050年ネットゼロエミッション目標を達成するためには、最も野心的なシナリオを用いた場合であっても、2050年の年間飛行距離を新型コロナウイルスの拡大期である2020年の年間飛行距離の半分以下に抑制する必要があることが明らかになった。 本研究成果は、国内学会2件、国際学会1件において発表を行い、研究成果の発信に努めた。また、本研究成果を英語論文に取りまとめ、現在査読付き国際誌に投稿中である。
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