研究課題/領域番号 |
21J12728
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
金塚 裕也 豊橋技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 時間知覚 / 瞳孔反応 / 明るさ知覚 / グレア錯視 |
研究実績の概要 |
私たちの時間知覚は極めて曖昧で様々な心理状態の影響を受ける.時間知覚機序は未だ明らかでないが,知覚する時間は,刺激がもたらす強度や神経活動量とそれぞれ相関があることが報告されており,これら両者を結びつける瞳孔反応に注目した.本研究では,眼球運動計測を並行した心理物理実験実施のスキルを活用し,採用者がこれまでに得ている主観的な知覚時間と瞳孔反応の関係の主要機序を明らかにするとともに,一見無関係に思える知覚時間と瞳孔反応を媒介する要因の特定を視野に入れた研究を行う. 当該年度は異なる計時対象の実験刺激を用いた心理物理実験と,瞳孔反応の同時計測を通して主観的な知覚時間と瞳孔反応の関係を媒介する要因の特定を軸に実験・計測を実施した.Glare錯視(物理的には等輝度でありながら主観的な明るさ感の増強を生じさせる錯視)を計時対象とした実験からは,主観的な刺激強度によっても時間知覚変調が誘発されることが明らかになった.さらに,並行計測した瞳孔反応の結果から,錯視効果によって縮小した瞳孔がこの時間知覚変調に寄与する可能性が示唆され,本結果を学術論文として報告した.加えて,時間知覚研究において古くから議論されており,尚且つ依然として見解の一致に至っていない色が知覚時間に与える影響についても着目し,異なる手法によって輝度を統制(物理的輝度の統制,主観的輝度の統制,対光反射量の統制)した色刺激を計時対象とした時間知覚実験から,瞳孔反応を統制することによって時間知覚変調が起こらなくなるとする結果を得て,国際学会にて発表を行った. これらの実験を通して,瞳孔径の変調により,主観的な時間知覚が変化する可能性が示されたため,今後も継続して統制実験を行い,瞳孔反応の寄与を含めた時間知覚変調メカニズムを明らかにすることも射程に入れて研究を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は異なる計時対象の実験刺激を用いた心理物理実験と,瞳孔反応の同時計測を通して主観的な知覚時間と瞳孔反応の関係を媒介する要因の特定を軸に実験・計測を実施し,当初の研究計画通り概ね順調に進展している.具体的には,主観的な知覚時間変調を抽出し並行的に瞳孔反応を計測する実験パラダイムのデザイン,物理的特徴量を統制しながら主観的な知覚量を変調することが可能なGlare錯視刺激の準備,対光反射の振幅値によるオフライン輝度マッチングを完了した. さらに,主観的な明るさ感の増強を生じさせる錯視であるGlare錯視を用いた心理物理実験を通して,物理的には等輝度にも関わらず,主観的に強度(Magnitude)の大きい錯視刺激によっても時間知覚変調が誘発されるとする実験結果を得て,どのように瞳孔反応が関与すると考えられるか,その推定機序を原著英論文として報告した.加えて,時間知覚研究において古くから議論されており,尚且つ依然として見解の一致に至っていない色(赤色/青色)が知覚時間に与える影響について,異なる手法によって輝度を統制(物理的輝度の統制,主観的輝度の統制,対光反射量の統制)した色刺激を計時対象とした時間知覚実験を行い,その結果を国際学会にて発表を行った. 現在は,瞳孔反応と主観的な時間知覚の関係性についてさらに切り分けを行うために,眼に入射する光量を絞りによって動的・リアルタイムで制御することができるデバイス(人工瞳孔)の設計に取り組んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの心理物理実験を中心とした実験結果から,瞳孔径の変調により,主観的な時間知覚が変化する可能性が示された.この仮説をさらに検討するため,眼に入射する光量を絞りによって動的に制御することができるデバイス(人工瞳孔)の設計と試作を進め,本システムを利用して瞳孔反応計測を含む時間知覚実験を行う. 加えて,来年度実施予定の神経活動計測実験(fMRI)の準備を並行して進め,心理物理実験を通して得た瞳孔反応と時間知覚における知見を神経活動計測によって補強する.さらに,来年度夏季の研究渡航に向けた海外連携指導教員との研究打ち合わせを進め,新型コロナウイルスや世界情勢の影響により研究渡航が困難になった場合には,オンライン実験も視野に入れた計画変更を行う.
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