研究課題/領域番号 |
21J12803
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小林 流基 慶應義塾大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 産業政策 / 実証産業組織論 / 過剰能力 / 装置産業 |
研究実績の概要 |
新技術の導入と普及が生産性に与える影響について製鉄業を題材に分析した研究は、論文が完成し投稿プロセスにある。"The Effects of New Technology on Productivity: Technological Improvement and Reallocation Efficiency in the Japanese Steelmaking Industry."という英語論文とし、Keio-IES Discussion Paper Series においてワーキングペーパーとして発表した。この論文は、査読付きの国際学術雑誌へ投稿した。 衰退産業の過剰能力問題に対する産業政策の研究については、当初鉄鋼業を対象とすることを検討し、公開データの収集と個表データの申請を行いつつ、過剰能力の削減に対し取られてきた産業政策のサーベイと、動学的寡占競争モデルを使用した論文のサーベイを実施した。需要と価格のデータを公開資料より取得し、サーベイをもとに分析モデルも固まった一方、相手先都合により個表データの提供を受けることができなかった。個表データからは本研究の鍵となる設備能力のデータを取得する予定であったため、鉄鋼業を対象とした分析の実行が困難となった。そこで対象産業の再検討を行い、固定費が大きい産業で需要が減少しているという本研究の要件を満たし、かつデータの取得可能性が比較的高いと思われる石油・ガソリンスタンド産業を対象とすることに決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初利用を予定していた鉄鋼業関連の個表データについて年度初めから申請と相談を実施していたものの、相手方の都合により最終的には取得ができなかった。分析に必要なデータが揃わなかったため、対象産業の再選定をする必要が生じた。一方で、対象産業とデータについては目処をつけることができたことから大幅に遅れが生じているわけではないため、「やや遅れている」が適切である。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた鉄鋼関連の個表データが得られなかったが、対象産業を石油・ガソリンスタンド産業とすることが決まった。ガソリンスタンドの店舗属性および価格のデータを入手途上にあり、早急に取得を進める。石油・ガソリンスタンド産業は直近で合併が多かった産業であり、さらに過剰能力を削減するために合併を促す産業政策が採られている。まずはこの政策が価格を通じて消費者に与える影響を分析すべく、誘導型による推定で合併が地域市場において価格に与える影響を分析する。さらに、上流が石油精製で下流がガソリン小売であるという産業の特徴を踏まえ、垂直的な関係が合併前後で小売価格さらには過剰能力の削減と社会厚生に与えた影響を分析していく予定である。
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備考 |
・Ryuki Kobayashi (2022) "The Effects of New Technology on Productivity: Technological Improvement and Reallocation Efficiency in the Japanese Steelmaking Industry." Keio-IES Discussion Paper Series.
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