研究課題/領域番号 |
21J12835
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木部 未帆子 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | ラオス / 肥満 / 性的分業 / 栄養 / 身体活動 / 現金経済化 / 土地利用 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で現地調査が叶わなかった。しかし取得済みデータの再検討や生体試料の解析、リモートセンシングにより、ラオス北部NN村における栄養摂取・身体活動の男女差と、生業・土地利用の変化について分析を行った。 ◆ラオス北部の健康転換に関する論文の執筆(再投稿):2019年8-9月にNN村で得たデータから、栄養摂取と身体活動の①生業パタンの違いによる世帯間差および②男女間差について再検討し、次の二点を新たに論じた。①ラオス北部における生業パタンの変化は、二次林で採集される野生植物の摂取量の減少や食塩の摂取量の増加、身体活動量の減少につながり、肥満や高血圧などの非感染性疾患に罹患するリスクを高める可能性がある。②NN村における雨季の栄養摂取と身体活動パタンの男女間差は、顕著ではないと考えられる。当該論文は、2022年1月29日にHuman Ecology誌に受理された。 ◆尿中遊離コルチゾール濃度(UFC)の分析:UFCはストレスの指標の一つであり、高UFCは肥満や高血圧のリスクとなり得る。過去に収集したNN村と周辺2村の住民の尿サンプルを用いて、UFCを測定・分析した。その結果、男性においてのみ現金経済化のレベルが高い村でUFCが高く、特にコメ栽培をやめることが高UFCに関連している可能性が示唆された。 ◆土地利用図の作成:地理情報システム(GIS)ソフトウェアと高解像度衛星画像を用いて、ラオス北部の土地利用図の作成を進めた。2015年と2017年に拓かれた焼畑を比較したところ、その面積や開墾した場所の特徴に違いがみられた。今後焼畑や水田の地理的特徴について詳細を分析する予定である。 以上の成果は、現金経済化に伴う生業と土地利用の変化がラオス北部住民の肥満リスクとなる可能性を指摘している。一方で肥満リスクの男女差については、さらなる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴う渡航制限で、ラオス現地での調査が実施できなかったため、本研究課題の核を成す1年の季節間差を考慮した栄養摂取・身体活動の評価ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年4月時点でラオスへの入国条件は緩和されてきており、数か月以内にフィールドワークを再開できると見込んでいる。5月中旬に現地訪問することを目標に、共同研究者やラオス側カウンターパートと、渡航や調査ビザの取得に必要な書類の準備を進める。
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