研究課題/領域番号 |
21J12881
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
櫻井 まりあ 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | LRRK2 / Rab / リソソーム / 細胞外分泌 / パーキンソン病 |
研究実績の概要 |
本研究では、パーキンソン病病因遺伝子産物LRRK2のキナーゼ活性に依存するストレス応答性リソソーム分泌についてのメカニズム解明を目的とする。ウエスタンブロッティング法によるリソソーム酵素の検出よりも簡便かつ高感度なリソソーム分泌検出系として蛍光基質を用いた実験系を構築した。この実験系を用いた検討により、クロロキン(CQ)処理によって惹起されるリソソーム分泌とは異なり、カルシウムイオノフォアであるイオノマイシンを添加することで惹起されるカルシウム依存性リソソームエキソサイトーシスはLRRK2阻害剤によって抑制されないことを見出した。また、LRRK2がCQ処理をはじめとするリソソームストレス下においてLC3と共局在することからオートファジー関連タンパク質に着目した。その結果、LC3の脂質化を促進するATG5-ATG12-ATG16L1複合体がリソソームストレス下においてLRRK2の局在・活性を制御することをノックダウン実験から明らかにした。オートファジー始動複合体を形成するULKなどのノックダウンではリソソーム分泌が抑制されなかったことから、ATG5-ATG12-ATG16L1複合体は通常のオートファジーとは異なる機能としてLRRK2を制御することが示唆された。さらに、超遠心法によって培養上清中のエクソソームを単離したところ、CQ処理時にエクソソームの分泌が亢進し、LRRK2阻害剤によって分泌が抑制されることを明らかにした。またエクソソーム画分にリソソーム酵素が含まれることも確認した。このことから、少なくとも一部のリソソーム内容物分泌はエクソソームを介していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ATG遺伝子をはじめとする候補分子のノックダウン実験により、LRRK2依存的なリソソーム分泌への関与が示唆される分子を複数確認した。また、蛍光基質を用いた簡便かつ高感度な実験系を構築した。現在、化合物を用いたスクリーニングの実施に向けて準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
スクリーニングによってCQ処理時のLRRK2依存的なリソソーム分泌を抑制する化合物を探索し、その薬理作用から分泌経路の同定を試みる。また、蛍光基質の実験系を用いて再度ノックダウンスクリーニングを行い関連分子を探索する。これらの方法により同定した分子についてLRRK2のキナーゼ活性や局在に与える影響を解析し、パーキンソン病発症へとつながるパスウェイの解明を目指す。
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