研究課題/領域番号 |
21J12954
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
本倉 健吾 神戸大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | Fano共鳴 / 導波モード / フォトクロミック色素 |
研究実績の概要 |
本年度は、主に以下の2つのテーマについて研究を行った。 1.平面多層膜構造におけるFano共鳴に伴う局所電場の観測:蛍光色素を用いて、Fano共鳴に伴う局所電場の実験的観測に成功した。2つの平面導波路が結合した多層膜構造では、導波モード間の干渉により、全反射減衰(ATR)スペクトル上にFano共鳴が発現することが知られている。このとき導波路に作られる局所電場の振る舞いは、Fano共鳴の発現機構を理解するうえで重要な情報となるが、従来のATR測定のみでは実験的に観測することができなかった。 局所電場を可視化するために、異なる波長帯で発光する蛍光色素をそれぞれの導波路層に埋め込み、各色素からの蛍光スペクトルを測定した。取得したスペクトル形状は各導波路の局所電場の積分強度と一致し、蛍光を介して各導波路における局所電場の振る舞いを可視化できることが示された。この方法を用いて導波モード間の結合強度依存性を調べ、弱結合時と強結合時で局所電場の振る舞いが大きく異なることを実験的に示した。また、結合調和振動子に基づく物理モデルを構築し、局所電場の振る舞いに関する知見が深まった。 2.ナノディスクアレイ―平面導波路構造におけるFano共鳴の観測と光機能化:平面導波路構造におけるFano共鳴の応用可能性を拡大するために、平面導波路構造とナノ周期構造の結合系を検討した。このような系では、ナノ周期構造の回折効果により、従来必要であったプリズム等の結合素子を用いなくとも導波モードの励起が可能となる。実際にシリコンナノディスクアレイ―ポリマー導波路構造を作製し、垂直入射の透過スペクトル上に鋭い共鳴を観測した。また、導波路にフォトクロミック色素を組み込み、光機能化することで、共鳴波長を光照射によって動的に制御できることを示した。このような動的制御性は、種々の光学素子へ応用する場合に重要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の1つであったFano共鳴に伴う局所電場の観測は今年度中に達成できた。残る研究課題である平面導波路とナノ周期構造の複合構造への展開についても、今後の研究の進展に繋がる良好な実験データを得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ナノディスクアレイ―平面導波路構造に現れる狭帯域共鳴の詳細な特性の解明を行う。ナノディスクの構造パラメータや材料、導波路膜厚などに対する共鳴の線幅、屈折率感度などを明らかにし、それらが最大となるような構造を探る。また電磁気計算も併用し、局所電場が線幅や屈折率感度に与える効果を明らかにする。これらを通して、本構造の屈折率センサーとしての有用性の実証を目指す。
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