超音波による脆弱性骨折の新規治療法の社会実装を目指し、その基盤となる治癒機序を解明することを目的に、超音波照射が脆弱性骨折の治癒過程に与える影響を検討した。これまでの研究から、骨折治癒促進法として臨床応用されている低出力超音波パルス(Low Intensity Pulsed Ultrasound:LIPUS)よりも高強度の超音波刺激が、より効率的に骨形成を促進できる可能性を見出した。本研究では、骨折後の内軟骨性骨化に超音波照射が与える影響を明らかにするために、マウス脆弱性骨折モデルに対し、毎日20分間、異なる強度の超音波を照射し、骨折治癒過程を評価した。その結果、LIPUS照射に相当する0.04W/cm2は骨折治癒過程に明らかな影響を与えなかった一方で、0.2W/cm2の超音波照射により、仮骨中の骨塩量が増加しており、LIPUSよりも高強度の超音波が仮骨の石灰化を促進できることが明らかとなった。さらに、0.2W/cm2の超音波照射群では、骨折早期の軟骨量および、骨芽細胞数の増加が認められ、高強度の超音波が軟骨形成と骨芽細胞分化を刺激することで、内軟骨性骨化を促進できることが示唆された。次に、骨細胞と骨芽細胞の三次元共培養系を用いて、超音波照射が骨形成に与える影響を評価した。in vivoの結果と一致して、LIPUSよりも高強度の超音波照射により、骨芽細胞の骨形成関連遺伝子の増加が認められた。また、骨芽細胞のみの三次元培養では、超音波照射後の骨形成関連遺伝子発現が減少しており、超音波による骨形成促進には骨細胞が関与していることが示唆された。最後に、機械感受性イオンチャネルPiezo1の阻害実験を実施した。Piezo1の阻害下では、超音波照射後の内軟骨性骨化の促進および、骨芽細胞の活性化が認められず、超音波照射による骨形成促進にはPiezo1が関与していることが示唆された。
|