2021年度までの研究においてマウスの足底に炎症が生じた際、脊髄においてスルファチド合成に関わる酵素の遺伝子発現が変化したことからスルファチドが炎症性の疼痛に関与している可能性が示された。また、スルファチドをマウスの脊髄髄腔内に投与することでアロディニアが惹起され、それにはアストロサイトが関与することが明らかになった。これらを踏まえ、炎症性疼痛モデルマウスの脊髄におけるスルファチドをTLCにより測定したところ対照群と比較して炎症惹起剤投与7日後に増加していた。スルファチドの量が7日後以外の炎症の日数によってどのように変化するかは検討予定である。 更に、スルファチドがアロディニアを引き起こす際に関与している分子の特定を試みた。スルファチドの生体内リガンドとして知られているセレクチンの阻害剤を事前投与することによってスルファチドによるアロディニアを抑制が抑制されたこと、炎症性疼痛モデルマウスに対してアロディニア抑制作用を示したことから、スルファチドがセレクチンを介してアロディニアに関与している可能性が示された。セレクチンの発現やグリア細胞との関与については今後検討していく。
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