新たに開発した金属イオンの物理過程、化学課程を組み込んだ3次元電離圏数値モデルにより、以下の3点を明らかにした。 (1)電離圏金属イオン層の水平移動は高度により駆動メカニズムが異なることを明らかにした。中性大気との衝突に対して電磁気的効果が無視できなる高度(約110 km)以上では、金属イオン層は鉛直圧縮の強い領域とともに水平移動を示していた。一方、高度約110 km以下では鉛直圧縮に対して水平輸送の効果が無視できなくなり、金属イオン層は風とともに水平移動を示していた。南北方向には、金属イオン層は潮汐波の南北成分により輸送をされていた。東西方向には、金属イオン層は西向きに伝播する傾向があった。 (2)電離圏金属イオン層に対する電場の影響を明らかにした。まず、電場は背景の金属イオンを昼間に電離圏E領域から電離圏F領域下部へ輸送していた。この金属イオンの供給により、高高度での金属イオン層の密度が上昇していた。また、夕方付近の下向き電場が駆動するイオンの下降運動により、下降する金属イオン層の密度の上昇や発生の促進が生じていた。 (3)冬場の金属イオン層の数10日間にわたる密度上昇の物理機構を明らかにした。従来は冬場の鉛直方向の風のシアは弱いと考えられてきたが、本研究は冬場でも鉛直方向の風のシアが特に夕方付近に強まることがあり、それにより金属イオン層の密度上昇が起きていることを見出した。この鉛直方向の風のシアの強まりには特に半日潮汐波が関与していた。半日潮汐波の増幅の物理機構には、惑星波による潮汐波の変調と成層圏突然昇温による東西平均東西風の南北半球間の非対称性が寄与していることを提唱した。 これらの結果は論文としてまとめ、現在は2本の論文が査読中である。
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