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2021 年度 実績報告書

+1-2℃温暖な気候状態における南極氷床のダイナミクス

研究課題

研究課題/領域番号 21J13181
研究機関北海道大学

研究代表者

飯塚 睦  北海道大学, 環境科学院, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2021-04-28 – 2023-03-31
キーワード南極氷床 / 最終間氷期 / 南大洋
研究実績の概要

現在,地球温暖化の影響により南極氷床の融解は加速しており,これによる海水準の上昇が危惧されている.現在の南極氷床の融解には,棚氷下に暖かい周極深層水(CDW)が貫入することや海水温自体の上昇が重要だと示唆されているが,どちらがどの程度影響しているかは明らかになっていない.この知見を得るには,現在よりも温暖で,より南極氷床が後退していた時代の南極氷床と南大洋の変動を詳細に調べることが有用である.そこで,本研究では,南極海の海底堆積物の有機地球化学(脂肪酸の水素同位体比,古細菌由来のエーテル脂質:GDGT)および微化石(放散虫)の分析から,過去の2つの温暖な時代(MIS 5e,MIS 11)における,南極氷床と海洋(水温,水塊)の変動を高解像度(数十年間隔)で復元する.これにより,過去の温暖期においてCDWの貫入強化と海水温の上昇がそれぞれどの程度南極氷床の融解に影響していたかを検証する.本年度の研究では,南極海の海底堆積物U1536の有機地球化学(脂肪酸の水素同位体比,古細菌由来のエーテル脂質:GDGT)および微化石(放散虫)の分析から,過去の温暖な時代(MIS 5e)における,南極氷床と海洋(水温,水塊)の変動を高解像度(数十年間隔)で復元した.その結果,過去の温暖な時代に,数回の急速な南極氷床融解が引き起こされていたことが示唆された.また,その時代に南大洋高緯度では現在よりも海水温が高かく,氷床融解の時期にCDWが強まっていることが示された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

分取したU1536試料について,抽出は150試料が終了した.脂肪酸,GDGTの分離精製においても150試料が終了し,水素同位体比測定は150試料の2回の測定が終了した.また,放散虫観察のためのスライドも200試料作成しており,観察が概ね完了している.現在、脂肪酸の3回目の測定,放散虫の群集組成解析を実施中である。脂肪酸の水素同位体比分析分析からは,南極氷床の変動を復元し,MIS 5e内で40‰程度の大きな変動を示した.また,GDGT分析は,OPTiMALという新規手法を用いて水温に換算し,MIS 5eでは,現在よりも温暖であったことが示唆された.MIS 5e内でも水温の大きな変動があり,現在この要因に関して解析中である.放散虫の群集解析からは,CDWの変動を復元し,MIS 5e内でCDWが大きく変動していることが明らかになった.

今後の研究の推進方策

今後は,3回目の水素同位体比測定を行い,MIS 5eにおける確度の高い南極氷床変動データを得る.また,放散虫群集解析においてもCDWに生息する種の検討を進めており,これが終了次第,放散虫の種同定済みのデータに適用することで,より確度の高いCDWの復元データにする.これらの結果と測定済みのGDGTのデータを解析し,MIS 5eにおける南極氷床と海洋(水温と水塊)の関連の関連に努める予定である.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] The Antarctic ice sheet and Southern Ocean dynamics during the Last Interglacial, Japan Geoscience Union Meeting2021

    • 著者名/発表者名
      飯塚睦
    • 学会等名
      Japan Geoscience Union Meeting
  • [学会発表] バイオマーカーを用いた最終間氷期における南大洋高緯度域の古環境復元2021

    • 著者名/発表者名
      飯塚睦
    • 学会等名
      有機地球化学会

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公開日: 2022-12-28  

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