研究課題
肺がん臨床検体のロングリード全ゲノムシークエンスデータを用いて,DNAメチル化状態と構造変異について,その関連性を一分子レベルで解析するパイプラインの開発を行った。その過程で,フェージング解析を利用した腫瘍特異的な変異のアリルレベルで解析する実用的なパイプラインが存在しなかったため,解析パイプラインの開発を行った。また,DNAメチル化状態の変化を伴う構造変異に対して,DNAメチル化状態と構造変異の状態から生起の順序を推定するようなパイプラインの開発も行った。開発したパイプラインを肺がん臨床検体20例に対して適用し,転写制御への影響や生起メカニズムの解明を試みた。DNAメチル化の変化を伴うような構造変異の特徴としては,DNAメチル化状態が低く,かつ,DNAメチル化の状態が変わったのちに,構造変異が生じる傾向にあることを同定することができた。また,DNAメチル化の変化を伴う構造変異と有名ながん遺伝子変異との関係性や,肺がんの種類との関係性,またレトロトランスポゾンと呼ばれるリピート領域との関係性について調べた。構造変異を示すリードでDNAメチル化が変化している領域の多くは,レロトランスポゾンの領域であることが判明し,RNA-seqのリードタグも存在していたことから,レトロトランスポゾン領域のDNAメチル化の低下と構造変異が関係している可能性が示唆された。これらの成果については,2022年度中に,国外の学術雑誌への論文発表(Sakamoto et al. Nature Communications 2022)を行い,また,博士論文の執筆及び学位の取得を行った。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Nature Communications
巻: 13 ページ: 1-17
10.1038/s41467-022-31133-6