研究課題/領域番号 |
21J13243
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
門田 圭祐 早稲田大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 相互行為 / 手渡し / 会話分析 / マルチモダリティ |
研究実績の概要 |
人々が渡し手の選択において参照している規範(ルール)を明らかにするため、日常生活を収録した映像データから手渡しの事例を集め、コミュニケーションの質的分析手法である会話分析の観点から分析をおこなった。2021年度は手渡しの事例の収集を終えるとともに、とくに渡し手選択に注目した分析をおこなった。その結果、(1)「物に届きやすい者が渡し手となれ」および(2)「受け取り手に物を渡しやすい者が渡し手となれ」という、自他の身体-環境の関係を知覚し、共有することを前提として運用される2つの原則を用いて渡し手が決まっていることが明らかになった。さらに、参与者たちは、参与者の成員性などの事例固有の文脈を参照しつつも、この2つの原則を運用していることが事例を超えて繰り返し見出された。そして、今後の課題として、物に届きやすい者と受け取り手に物を渡しやすい者とが異なる場合、手渡しがどのように組織されるのかを明らかにする必要が示された。現在は、以上の成果をまとめ、国際誌に原著論文として投稿するための作業を進めている。なお、当該の成果の一部は、研究代表者の他の論文とともに博士学位申請論文として提出され、受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は渡し手選択の分析に、2022年度は受け取り手選択の分析にそれぞれ注力する予定であった。2021年度には、渡し手選択において人々が用いている原則を明らかにすることができたものの、今後の課題として、物に届きやすい者と、受け取り手に物を渡しやすい者とが一致しない場合の渡し手選択について検討する必要が示された。そのため、現時点で受け取り手選択の分析に着手していない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究を通して示された、物に届きやすい者と受け取り手に物を渡しやすい者とが一致しない場合の渡し手選択という問題に取り組む。これまでの分析から、該当の状況について検討する上では、物を中継しながら渡す場合など、複数人が共同的に物を渡す事例が適していることが示唆されている。これをふまえ、収集済みの手渡し事例の中から、該当の事例を抽出し、分析することで上記の問題を解明することを目指す。
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