本研究の目的は、心臓電気生理シミュレータと深層強化学習を組み合わせたin silico学習によって、これまで提案者の経験や主観に強く依存していた焼灼治療戦略を客観的に最適化することである。 最終年度である2022年度は、昨年度末に構築した、in vitro心筋シートに対して光学計測による膜電位計測と、レーザによる焼灼を行うことができる実験システムについて、第68回日本不整脈心電学会学術大会で報告した。 研究実施計画ではin vitro実験システムに対して、高時空間分解能で撮影できるように光学系を変更し、また光学計測とレーザ焼灼系を統合し焼灼時の興奮様態変化を観察できるように改良を行う予定であったが、本研究の提案には実際の臨床現場では計測不可能な膜電位情報を入力として使用しているという課題が残されていることを再認識し、この課題を解決するために実臨床でもマッピングカテーテルによって計測可能な細胞外電位信号から、膜電位動画を可視化する深層学習モデルの構築を優先して行った。まずこの提案手法の原理実証をコンピュータシミュレーション上で行い、模擬電極信号から高精度で膜電位動画を再構成できる可能性を示した。また提案手法の有効性を検証するために、ブタ摘出心臓標本に対して細胞外電位信号と膜電位信号を同時に計測する実験システムを構築し、ex vivo実験も行った。その結果、実際のブタ心房標本においても電極計測信号から膜電位動画を再構成できる可能性を確認した。本成果は2023年4月に学会発表を予定している。
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