研究課題/領域番号 |
21J13351
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
橋本 舜平 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | ソルガム / 超優性遺伝子 / 節間伸長 / バイオマス |
研究実績の概要 |
本研究は、稈長(節間長)に関する超優性(超顕性)遺伝子候補として、ソルガムの矮性遺伝子であるDw3及びDw7aに着目し、超優性現象における分子遺伝学的メカニズムの解明を目的とするものである。本年度は、それぞれの遺伝子における超優性効果を評価するため、遺伝学的にゲノム背景を同質化し、かつ当該遺伝子座が分離する集団の作成とその集団を用いた超優性効果の検定を行なった。集団の作成には、MS79(dw7a dw7a Dw3 Dw3)、SIL-05(Dw7a Dw7a Dw3 Dw3)、及びbmr-6(Dw7a Dw7a dw3 dw3)を供試した。Dw7aについてはMS79を戻し交雑親とし、MS79xSIL-05 (F1) (dw7a Dw7a)に対して連続戻し交配を行い、Dw7a遺伝子座をヘテロで維持したSIL-05xMS79(BC3F7)を得た。一方、Dw3に関しては、SIL-05 (Dw3Dw3)を戻し交雑親とし、bmr-6xSIL-05(dw3 Dw3)と連続戻し交配を行い、Dw3遺伝子座をヘテロで維持したbmr-6xSIL-05 (BC5F1)を作成した。これらの材料の後代分離集団を供試し、各遺伝子型の稈長及び節間長を測定することで、Dw7a及びDw3の超優性効果を評価した。その結果、Dw3に関してはヘテロ型個体において各ホモ型より有意な稈長の増加が確認され、相加効果aと優性効果dの比であるd/a (1以上で超優性効果を示す指標)は約1.8となった。また、特に上位節間長において超優性効果が顕著であることが示唆された。一方、Dw7aに関してはd/aが1.0以下となりであり、超優性効果は示されなかった。以上の結果から、Dw3は弱いながらも、ソルガムの節間伸長における超優性遺伝子であると考えられた。また、本年度はDw7aについては責任遺伝子の同定も行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、当初の計画通り、Dw7a及びDw3の超優性効果の評価に適した分離集団を作成し、その形質(稈長および節間長)評価を行うことができた。その結果、本研究で超優性遺伝子候補としたDw7a及びDw3のうち、Dw3に関しては弱い超優性遺伝子であることを明らかにした。一方、Dw7aについては超優性遺伝子であるという証拠は得られなかったものの、責任遺伝子の同定を行った。また、遺伝的背景による超優性効果の違いを評価するための実験材料としてDw1、Dw3、Dw7aが全てヘテロ型となる系統を作成できた。以上の進捗状況から、本研究課題がおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Dw3の超優性効果について、再現性を確認するため同じ分離集団を用いた反復実験を行う。また、超優性メカニズム解明に向けて、節間サンプルを用いたRNA-seqによる網羅的発現解析も行う予定である。一方、Dw7aに関しては通常の優性遺伝子である可能性が高い結果となったため、節間伸長における機能解析に重点を置く。また、今年度はSIL-05背景でDw1、Dw3、Dw7aが全てヘテロ型となる系統を作成できたが、次年度、この後代分離集団を圃場展開し稈長及び節間長を測定することで、Dw3の超優性効果を含め、他の矮性遺伝子との遺伝的相互作用を検証する予定である。
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