研究課題/領域番号 |
21J13371
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
仲里 慎司 東京理科大学, 経営学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | ガウス過程 / 探索行動 / レジームスイッチモデル / バンディット問題 |
研究実績の概要 |
2021年度は、本研究が採用するGaussian Processを利用するにあたり問題となる、Independence from Irrelevant Alternatives (IIA)公理が維持される点について、その解決に従事した。 本研究の目的は、(1)Gaussian ProcessとUpper Confidence Boundを組み合わせたモデリングで人々の推論を類推過程として明示的に扱い、(2)同モデルをベースとしたレジームスイッチ型モデルをサーチやアンカリングの問題に適用することである。しかしながら、同手法の問題の1つにIIA公理が維持される点が挙げられる。IIAとは、任意の2つの選択肢の選択確率比率は、それら以外の選択肢の変化によって影響を受けないとするものであるが、この公理はLuce [1959]によるロジット型確率選択モデルの特徴づけにおいて、中心的な役割を果たす。様々な意思決定の分野において、IIA公理は、しばしば我々の直観に反する例を生み出し、強すぎる制約であるとして議論の対象となってきた。そしてこの公理は、本研究でメインとするbanditに応じて報酬構造が変化する環境下においても同様に強すぎる制約であるように思われる。人間は、選択される対象そのものの情報だけではなく、選択する予定の選択肢と類似した特徴を持つ選択肢について得られる情報(情報のスピルオーバー)についても加味しつつ、選択を決定していると考えられるからである。 研究では同問題の解決にあたりActive learningの分野における知見を利用し、既に一定の結果が得られている。現在、これらの結果に基づいた論文の投稿作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現時点で、本研究計画には遅れが生じている。その理由として、Gaussian process を人間の意思決定モデリングに利用するにあたり、以下2つの解決されなければならない問題が生じたためである。1つ目は「研究実績の概要」でも言及した、Independence from Irrelevant Alternatives公理が維持される点である。この問題の解決に関しては、2021年度の研究活動で既に一定水準に到達しており、現時点において、本研究計画をさらに遅延する要因にはなり得ないと思われる。もう1つの問題点はGaussian processによる期待の更新をモデル化するためには、主体が選択から得たリターンを、分析者が観測する必要がある点である。先行研究では、このリターンに意思決定主体の事後的な評価のフィードバックが用いられるが、しかしながら、一般に、多くの応用問題において、主体が選択から得るリターン/効用は、主観的なものであり、観測者の手には入らないことが多い。この問題は、主体の主観的リターンが入手困難なサーチやアンカリングといった問題に同手法を利用することを目的とする本研究において、解決されなければならない問題点である。現在は、こちらの問題の解消に臨んでいるが、こちらも既に解決の見込みがたっており、数か月以内には完了するものと予想される。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画について、直近では、研究遂行にあたり解決されなければならない問題の1つである、主観的リターンの観測の問題について、その研究活動を完了させることを目標とする。その後については、既に提出している研究計画に従い、本研究モデルをサーチのモデリングに応用し、その有効性を検証する。研究を遂行する上での問題点は、これまでの研究活動でほぼ解決がなされたと捉えており、現時点で、計画の実施にあたり懸念すべき点はないものと考えている。
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