研究課題/領域番号 |
21J13410
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
山田 等仁 京都産業大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 二成分毒素 / 細菌毒素 / 膜孔 / クライオ電子顕微鏡 / 単粒子構造解析 |
研究実績の概要 |
我々はイオタ毒素と同様に二成分毒素である、ディフィシル菌CDTの複合体の構造解析を行った。この結果からCDTaはCDTb膜孔への結合に伴って、イオタ毒素と同様なアンフォールドを受けることがわかった。さらに、CDTb膜孔のNSS-loopという構造では、膜孔の内側あるいは外側にフリッピングした二つの状態を持つことがわかった。またCDTaとの結合に伴って柔軟にこの二状態のどちらかに構造変化することがわかった。このような柔軟な構造は酵素成分の膜透過に重要である可能性が示唆された。 次に膜透過機構を解析するべく、イオタ毒素の膜透過中間体の構造解析に挑んだ。膜透過は膜内外のpHの勾配によって引き起こされることが知られているため、Ib膜孔をリポソームに再構成する実験を行った。その結果、我々の考案した調製法ではIb膜孔はリポソームには再構成されず、Ib膜孔が複数放射状に集合したrosette構造を形成していることがわかった。このIb-rosetteからIb膜孔部分のみを単粒子構造解析したところ、これまでに報告されている二成分毒素膜孔の中で最も高い分解能で構造を得ることができた。このIb-rosette調製は他の二成分毒素の単粒子構造解析においても応用可能であると思われる。 ウェルシュ菌が産生する二成分毒素CPILEの膜孔、CPILEbは他の二成分毒素膜孔で酵素に保存されている疎水性な狭窄部位を形成する残基がPheからSerに変異しており、特異な毒性を示す可能性が示唆されている。そこでCPILEb膜孔の構造情報を得るべく膜孔の調製に挑んだ。しかしながらin vitroにおいては他のイオタ毒素Ib膜孔と同様な実験方法、コンストラクトを使ってもCPILEb膜孔の調製は成功しなかった。一方で細胞に添加した条件では、その後のウェスタンブロッティングで膜孔の形成を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜透過中間体の構造解析 二成分毒素の膜透過は標的細胞中のエンドソームのpHが下がり、膜を介して酸性ー中性のpH勾配が生じた時に起きることが知られている。そこでin vitroで膜透過条件を生じさせるためにIb膜孔をリポソームに再構成することを目指した。当初リポソームに再構成をする予定であったIb膜孔は、我々の調製方法においては、プロテオリポソームにならずrosette様の構造体を形成していた。Ib-rosetteの調製は高分解能構造解析には有用であることがわかったが、当初の目的であった脂質膜を介してpH勾配を作成することはできない。 また膜透過中間体の構造解析を行うためにはIaの膜透過を途中で静止させる必要がある。また二成分毒素の膜透過には酵素成分のアンフォールドが必要であることがこれまでの研究で示唆されている。そこでアンフォールドが停止することを予想し、分子内部にSS架橋が生じる変異体Iaを作製した。この変異体Iaが構造をWild typeと同様の構造を維持していることを確認するため酵素活性を試験したところ、架橋位置は活性部位と離れているも関わらずWild typeと比べて明らかに低い活性を持つことがわかった。これは分子内架橋によって分子の動きが束縛されたことが原因であると考えられる。念のため変異体IaとIb膜孔の複合体の構造を解析したところ、変異体IaもWild typeと同様の構造を有していることがわかった。 CPILEb膜孔の構造解析 イオタ毒素Ib膜孔はプロテアーゼによる活性化では膜孔は形成されないが、エタノールが添加される、あるいは受容体結合ドメインが欠失された変異体では効率的に膜孔を形成する。これを構造未知のCPILEbでも実践したが、膜孔形成は見られなかった。一方で細胞に添加した条件では、その後のウェスタンブロッティングで膜孔の形成を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
膜透過中間体の構造解析 当初の予定であったサンプル調製を行うためには、Ib膜孔のリポソーム再構成は必須である。これまでは独自に考案した再構成方法を実行していたが、今後は近年報告された膜タンパク質のリポソームへの再構成方法をIb膜孔でも実践する。これによってIb膜孔リポソームの調製に成功した場合は、変異体Iaをを添加してリポソーム内外にpH勾配を生じさせ膜透過を引き起こす。変異体Iaの分子内環境によって透過が停止すると思われる膜透過中間体を単粒子構造解析し、N末端に続く構造がいかに狭窄部位を透過するのかを明らかにしたい。 CPILEb膜孔の構造解析 CPILEbはイオタ毒素Ibで成功した膜孔調製方法では膜孔を形成しなかった。しかしながら、接着細胞にCPILEbを添加した条件ではCPILEbが膜孔を形成することを確認できている。クライオ電子顕微鏡にむけたサンプル調製では結晶構造解析ほど大量のサンプルを必要としないため、細胞を用いた膜孔形成とそこからCPILEb膜孔を回収、クライオ電子顕微鏡による構造解析を行いたい。 また、イオタ毒素Ibにおいては受容体ドメインの欠失によって、膜孔形成の効率化をできた実績があるため、高精度なタンパク質構造予測のツールとして知られるAlphaFold2を用いてCPILEb単量体の構造を推定し、この予測構造から効率的に膜孔化することが期待される変異体の作製を行う。この変異体CPILEbで効率的な膜孔形成が確認できた場合はX線結晶構造解析あるいは単粒子構造解析を行い、CPILEb膜孔の構造解析を行う。
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