研究課題
Mg-Zn-Y系急冷合金は強度や耐食性、疲労強度が非常に優れていることから航空機用構造部材への適用が検討されている。一方で構造材料として重要な特性の一つである破壊靭性については不明な点が多いことが課題となっている。本年度は、Mg-Zn-Y系急冷合金の破壊靭性に影響を及ぼす力学的、組織学的因子の解明を目的に、急冷条件、熱処理条件、押出条件、合金組成等の合金作製条件の探査を行い、作製した試料の機械的特性評価および組織評価を行った。その結果、特に急冷時の冷却速度と押出前熱処理により、結晶粒度分布、転位密度分布、結晶方位および第二相であるLPSO相の形態といったマルチモーダル組織因子を効果的に制御することができ、破壊靭性を改善できることが明らかとなってきた。特にα-Mg領域において高い転位密度の①加工粒および②超微細再結晶粒、低い転位密度の③微細再結晶の三つの領域を形成させることが強度、加工硬化能、延性の両立に有効であることがわかった。LPSO相の形態制御ではプレート状からブロック状に変化させることで、き裂進展抵抗を高めることができることが明らかとなった。また、マルチモーダル組織形成機構の解明を目的に、冷却速度と押出前熱処理が押出前組織に与える影響を調査した上で、押出によって与えられる相当歪み量とその組織形成進行度の関係を様々な加工条件の下で調査した。その結果、押出加工時の塑性流動、集合組織形成、動的再結晶によって破壊靭性改善に有効なマルチモーダル組織が形成される過程を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り様々な合金作製条件の探査を行い、機械的特性評価および組織評価を行うことができた。合金組成の影響については更に調査していく必要がある。
破壊靭性に影響を及ぼす力学的、組織学的因子の解明のため、SEM内で破壊靭性試験のその場観察を行い、破壊時のき裂先端の変形挙動およびき裂進展挙動を明らかにする。またマルチモーダル組織形成機構の解明のため、急冷プロセスにおける凝固過程についてシミュレーションを併用しながら解析を進め、冷却速度が急冷薄帯の組織形成に及ぼす影響を明らかにする。
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Materials Science and Engineering: A
巻: 832 ページ: 142348~142348
10.1016/j.msea.2021.142348
Proceedings of the 12th International Conference on Magnesium Alloys and Their Applications
巻: - ページ: 71~77
10.1007/978-3-030-72432-0_8