本研究は、朝鮮戦争期からベトナム戦争期(1950年~1970年代初盤)の大韓民国における徴兵忌避と脱走兵をめぐる社会史的研究である。研究初年度である2021年度は、前半期(4~11月)に日本での調査(文献資料及びインタビュー)を実施し、後半期(11月以降)は韓国へ渡航、長期滞在体制を整え、主に文献資料の調査を実施した。また、それとともに韓国で既存の成果にもとづき研究発表も実施した。 調査面について具体的に述べておくと、日本ではまず、各種史料館にて在日朝鮮人運動関連の新聞資料を一挙に収集した。また、1960年代に韓国人脱走兵の亡命を援助した「ベトナムに平和を!市民連合」関連の古本や新聞資料を大学図書館などで取集した。それとともに、当時韓国人脱走兵の亡命援助運動に加わった「べ平連」関係者へのインタビューを実施した。 また、後半期には主に韓国の国史編纂委員会、国会図書館、国立中央図書館にて文献資料を収集した。そのなかでも国会図書館において1950年代の憲兵関連資料を閲覧したところ、脱走兵関連の資料を見つけることができ、調査に大きな進展が見られた。 研究成果の発表としては、既存の資料調査にもとづいて『同時代史研究』および『大原社会問題研究所雑誌』に、1950年代に韓国から日本へ「密航」してきた徴兵忌避者と脱走兵の経験に関する論文を発表した。また、韓国の研究会において同様のテーマで研究発表を実施し、海外にも研究成果を発表することができた。
|