今年度は特に韓国での現地調査を継続しつつ、兵役法違反裁判関連資料と軍隊内の部隊新聞資料を収集した。とりわけ、軍史問題研究所におもむき、極めて重要度の高い諸資料を発掘、収集することができた。また、一方では、国史編纂委員会所蔵の兵営日記など、ネットでの閲覧が広範囲にわたって可能になりつつ韓国においてさえも、インターネットでは公開されていない諸史料を閲覧、収集することができた。 また、一方では、これまでの調査にもとづき、韓国語での論文執筆も行い、成果を広く発表することができた。具体的には、「1950年代における韓国軍脱走兵の動態とその諸相」『歴史問題研究』第49号を発表することでき、日本社会のみならず、韓国社会でも自分の研究成果を発信することができたのは、大きな成果のひとつであると考えている。 一方、課題としてはインタビュー調査の進捗が遅れたことがあげられる。まず、インタビュー対象が集団として存在していないうえに、韓国社会において極めてセンシティブな問題であるために、インタビュイーを探すことは困難を極めた。これは調査計画に再検討を要する部分である。また、初年度にコロナによる調査の遅れが生じ、今年度も継続して韓国での現地調査を進めたために、日本での調査が予定よりもできなかったことも合わせて報告しておきたい。 以上、今年度の調査について報告したが、全体として研究の進捗状況は、予定通りとはいかないものの、悪くはなく、まとまった成果を数年以内に発表できるであろう。
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