研究課題/領域番号 |
21J13499
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
三谷 亮介 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 粉体シミュレーション / カスケードインパクター / 粉体工学 / 数値流体力学(CFD) / 離散要素法(DEM) / 粉末吸入製剤 |
研究実績の概要 |
肺に吸入される粒子状物質の人体への影響の理解のために、肺内の異形粒子の移動現象を解明することを目的とする。本研究では肺内の粒子の運動を直接観測することは困難であることから、数値シミュレーションに着目する。しかし、異形粒子では、球形粒子と異なり、回転を伴うことから、その運動挙動が複雑となる。そこで、本年度では異形粒子の流体抗力を適用した数値シミュレーションモデルを提案し、カスケードインパクターのスロート内における異形粒子の運動挙動を確認することで、提案した数値シミュレーションモデルの妥当性検証を行った。実験と数値シミュレーションにおいてスロート内における粒子の残留量および残留挙動が一致したことから、提案したモデルが実験結果と一致することを確認した。また本モデルを用いてエアロゾル粒子のスロート内における粒子の運動挙動を解析したところ、スロート内で残留する粒子は通過した粒子よりも上下に抗力を受けて、滞留していることを確認した。ここでスロート内での流体挙動を確認すると、残留が発生した箇所では循環流が観測され、この循環流によって粒子が残留することを明らかにした。さらに、カスケードインパクターを用いた吸引実験および提案した異形粒子の数値シミュレーションの双方から針状粒子の運動挙動の解析を行った。その結果、実験および数値シミュレーションどちらにおいても、粒子のアスペクト比によってカスケードインパクターのステージ下部への到達率が変化していることを明らかにした。これは、粒子のアスペクト比によって粒子の流体抗力が変化し、それに伴い、流体の流れに従う粒子の運動挙動が粒子のアスペクト比によって変化したからであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究において、アスペクト比に着目した異形粒子の抗力モデルの妥当性の検証でき、本モデルを用いた数値シミュレーションにより、カスケードインパクター内部の針状粒子の運動挙動を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究で、アスペクト比に着目した異形粒子の抗力モデルの提案ができた。今後はカスケードインパクター内部の詳細な解析の他、簡易肺モデルにおける粒子の運動挙動の解析を行う。数値シミュレーションを用いて、粒子の形状としてアスペクト比を変更し、それに伴う流体抗力の変化および本装置内部における粒子の到達現象の解析を行う。シミュレーションで得られた結果を実験結果と比較することで、本装置内部における粒子沈着・移動現象の解明を試みる。実験には昨年度購入した、グローブボックスを用いて調湿を行い、高精度な電子天秤によってカスケードインパクターの格段に捕集された粒子を測定する。 カスケードインパクターにおける粒子の運動挙動を解明した後は、分岐を複数持つ簡易な肺モデルを作成し、数値シミュレーションによって肺内における異形粒子の運動挙動を解析する。肺内の分岐における異形粒子の沈着量を粒子のアスペクト比に着目して解析し、アスペクト比に対する粒子の流体抗力とその時の分岐における沈着量を解析する。 簡易肺モデルにおける異形粒子の運動挙動の解析が完了したら、実際の患者における肺構造をCTスキャンから取得することで、数値シミュレーションを実施し、異形粒子の沈着量の予測を行う。
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