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2021 年度 実績報告書

ナノDDSのための無機融合人工エクソソームの開発

研究課題

研究課題/領域番号 21J13562
研究機関京都大学

研究代表者

水田 涼介  京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2021-04-28 – 2023-03-31
キーワード細胞外小胞 / エクソソーム / エクソソームエンジニアリング / リポソーム / 人工エクソソーム / ドラッグデリバリー / 磁場応答性キャリア / 有機無機ハイブリッド
研究実績の概要

本研究では分子間力を駆動力として、コレステリル基置換プルラン(CHP)からなるナノゲルなどのナノ粒子表面に生体膜を被覆することによる人工エクソソームの開発を目的としている。今年度は、ナノゲルと生体膜間に働く相互作用の評価、および生体膜微粒子の単一粒子解析手法の確立に重点を置いて研究を推進した。具体的な研究成果を以下に述べる。
申請者の先行研究において、エクソソームとCHPナノゲルに酸化鉄ナノ粒子を内包した磁性ナノゲルの複合化について検討を行ってきた。その中で、生体膜に覆われたエクソソームと磁性ナノゲルを混合することで安定な複合体を形成することが明らかとなっていたが、その詳細なメカニズムの解明には明らかになっていない。そこで、モデル生体膜ナノ粒子としてリポソームを用いて、磁性ナノゲルとの複合化メカニズムの評価を行った。示差操作熱量分析等の結果より、ナノゲルのコレステリル基が膜に挿入されることで生体膜と相互作用することが明らかとなった。この結果は、コレステリル基をアンカーとして、安定に生体膜をナノゲル表面に被覆可能であることを示唆する重要な知見を得ることができた。また、リポソームと磁性ナノゲルの複合化についてイメージングフローサイトメトリーを用いて単一粒子解析する手法を確立した。これにより磁性ナノゲルはリポソームやエクソソームといった生体膜微粒子の内包物を保持したまま複合化することが明らかとなった。本解析手法は今後作製していく人工エクソソームの表面構造の単一粒子解析にも応用可能である。
また、今年度実施した磁性ナノゲルを用いた生体膜微粒子の複合化メカニズムの解明は、ナノゲルをインターフェイスとして、生体膜微粒子の構造を損なうことなく無機微粒子により機能化する新規手法としても学術的価値が高い。実際にこれらの結果は学術雑誌Nanoscale Advancesに受理され、掲載された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、主にコレステリル基置換プルラン(CHP)からなるナノゲルと生体膜間に働く相互作用の評価と生体膜ナノ粒子の単一解析手法の確立について検討を進めた。これらの検討は、本研究の目的であるナノゲルを基本骨格とする人工エクソソームの構築に関わるメカニズムの解明および、作製の評価手法として重要な知見であると考えている。そのため、これらの検討に時間を割き、推し進めた。その結果、ナノゲルのコレステリル基が生体膜の挿入されることで相互作用すること、その相互作用はタンパク質の添加によってコントロール可能であることが示された。これらの知見に合わせて、ナノサイズの生体膜小胞の構造をイメージングフローサイトメトリーを用いて、単一粒子レベルで統計解析する手法を確立することができた。また当初の予定であった、トップダウン、ボトムアップの2つのアプローチによるナノゲルをはじめとするナノ粒子に対する生体膜のコーティング手法の確立についても検討を進めている。ボトムアップアプローチについてはモデルナノ粒子のシリカナノ粒子に外部場を印加し、密度勾配遠心により作製した脂質層を透過させることで粒子表面に脂質二分子膜を被覆する手法を確立しつつある。また、トップダウンアプローチについては、細胞にナノゲルを透過させることで細胞由来成分をナノゲルと複合化する最適な条件を明らかにしつつある。これらの状況から、本研究課題は順調に進展しているものと考えている。

今後の研究の推進方策

今後はボトムアップ、トップダウンアプローチによりナノ粒子表面に天然、人工の生体膜を被覆する手法の最適化について主に検討していく予定である。
ボトムアップアプローチでは密度勾配遠心により作製した脂質層にナノ粒子を透過させることで、粒子表面に脂質二分子膜を再構成することで作製した脂質膜被覆ナノ粒子の更なる機能化について検討を行う。具体的には、無細胞タンパク質発現を脂質膜被覆粒子存在化で行い、脂質膜に膜タンパク質を修飾することで機能化を行う。細胞外小胞やウイルスの膜において、細胞との相互作用等で重要な役割を担う膜タンパク質をターゲットとして用いる予定である。修飾の評価はイメージングフローサイトメトリーを用いる。
トップダウンアプローチでは多孔質基盤上に培養した細胞を貫通した粒子の機能評価を行うことで人工エクソソームとしての有用性を確認する。免疫細胞、がん細胞や幹細胞など様々な細胞種について検討を行い、細胞膜被覆粒子作製における汎用的なトップダウンアプローチとして確立する。ナノ粒子が細胞を透過する際の経路や、ナノ粒子に複合化した細胞成分の機能についてはタンパク質に注目しプロテオーム解析を行うことで明らかにしていく予定である。
また、人工エクソソームのコアとなる新規機能を有する有機無機ハイブリッドナノマテリアルのワンポットで作製する手法の開発を行う予定である。具体的には、疏水化多糖からなるナノゲルを銀などの金属イオンと混合することで、ナノゲルをテンプレートとして内部に金属ナノ粒子を生成する手法を確立する予定である。本項では金属イオンが還元されナノ粒子化したことをX線吸収分析により明らかにしていく。研究の最終段階ではこれらの有機無機ハイブリッドナノ粒子表面に、人工、天然の生体膜を被覆することによって、無機材料の機能を持った人工エクソソームの作製を行っていく予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Reversible conjugation of biomembrane vesicles with magnetic nanoparticles using a self-assembled nanogel interface: single particle analysis using imaging flow cytometry2022

    • 著者名/発表者名
      Mizuta Ryosuke、Sasaki Yoshihiro、Katagiri Kiyofumi、Sawada Shin-ichi、Akiyoshi Kazunari
    • 雑誌名

      Nanoscale Advances

      巻: 4 ページ: 1999~2010

    • DOI

      10.1039/d1na00834j

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Construction of artificial biomembrane hybrids based on magnetoresponsive nanocarriers2021

    • 著者名/発表者名
      Ryosuke Mizuta, Shin-ichi Sawada, Yoshihiro Sasaki, Kazunari Akiyoshi
    • 学会等名
      第70回高分子年次大会
  • [学会発表] 自己組織化ナノゲルをインターフェイスとする細胞外小胞-磁性ナノ粒子複合体の作製と機能評価2021

    • 著者名/発表者名
      水田 涼介、澤田 晋一、佐々木 善浩、秋吉 一成
    • 学会等名
      第8回日本細胞外小胞学会学術集会

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公開日: 2022-12-28  

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