前年度の研究において、当初計画していたFe:CdTe結晶の各物理パラメータの評価およびレーザー発振器の開発にあたって、励起光源として使用していたCr:CdSeレーザーの励起エネルギーが、Fe:CdTe結晶の発光およびレーザー発振に必要なエネルギーよりも小さいことが判明した。そのため、計画を変更して増幅器を構築し、Cr:CdSeレーザーの励起エネルギーを増大させる方針に変更した。当該年度においては、Cr:CdSeを用いたシングルパス増幅器の特性評価を世界で初めて試験した。その結果、波長可変領域 2.27-2.98 μmを達成し、波長 2.40 μmにおいて最大出力エネルギー 2.63 mJおよび最大抽出効率 70.3%を得た。また増幅後も高品質なビームであるTEM00を達成した。特性評価の過程で、Cr:CdSe増幅器の励起光源として用いたTm:YAGレーザーの偏光方向によるパラメータの変化も同時に調査したが、依存性は見られず、偏光方向が時間変化によって変わる励起光源を用いた場合でも増幅器として使用できることがわかった。増幅器に用いた光学ミラーの反射率および、用いたCr:CdSe結晶の最適化により、さらに高い出力エネルギーおよび抽出効率が得られることが明らかになった。以上の結果をまとめ、2022年12月に国際誌Sensors and Materialsにて報告した。また2023年3月に開催された日本学術振興会が主催する国際会議HOPE meetingにても発表を行った。その模様がNHK茨城のニュースとしても取り上げられた(https://www3.nhk.or.jp/lnews/mito/20230228/1070020177.html)。増幅器による励起エネルギーの増大が達成されたため、再度Fe:CdTe結晶を用いた吸収・蛍光スペクトル・ダメージ閾値などの各物理パラメータの評価および日本では初めてとなるレーザー発振器の開発も来年度以降実施予定である。
|