液晶パネルや半導体の製造に用いられる精密ステージは,製品の高性能化と低価格化を達成するために,高速高精度な駆動が要求される。本研究グループは精密ステージの位置決め精度を低下させる最後の要因とされているケーブル張力による外乱に着目し,電力ケーブルを排除するために無線電力伝送で駆動する精密ステージ(Wireless High-Precision Stage; WHPS)を試作した。本研究では主にWHPSの高効率駆動を目指す。 2022年度は主にWHPSの高効率な駆動を実現する手法に取り組んだ。WHPSでは無線電力伝送の受電側電圧を安定化させるために,受電側整流器で2モード制御を行っている。また,WHPSはあらかじめステージの動作軌道から負荷のモータの消費電力が予測できるという特徴がある。以上を踏まえ,予測した消費電力をもとに2モード制御の状態(整流比)を最適化して送電側電圧を決定することで,WHPS駆動時の無線電力伝送の損失を低減する手法を提案した。数値計算と実験により,最適電圧比法などの従来手法よりも損失が低減されることを確認した。これにより,本研究で目標としていたWHPSの高効率駆動が可能になったと考えられる。 また,その他には精密ステージにおける位置決め制御や外乱推定にも取り組んだ。位置決め制御については2021年度に取り組んだテーマを引き続き行った。外乱推定については,推定に利用するセンサの分解能の解析や,その分解能が問題になるときの対策について提案し,実験にて検証した。これらはより効果が大きかった工作機械用精密ステージに適用したが,手法自体は一般的なものであり,WHPSにも適用可能であると考えられる。
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