申請者はこれまで,日常生活下で睡眠習慣を改善させることを目的としたmobile health研究を実施し,睡眠習慣の変容効果の検証を行ってきた.第一に,身体活動データから日々の睡眠指標を推定するアルゴリズムや計測結果を対象者のスマートフォンアプリにフィードバックするスクリプトの開発に着手した.加えて,作成されたアルゴリズム等を用いて就労者約40名を対象に客観的な睡眠データに基づくフィードバック介入を行うことで,日々の睡眠習慣が変容可能であることを示唆する知見を得た.当研究成果は国際的な医学誌であるJMIR mHealth and uHealthにて原著論文として採択された.これに加えて,睡眠フィードバックの個人内効果を検証するための介入研究で得られたデータを分析し,英語論文の執筆に取り組んだ.この研究では就労者140名の中から睡眠習慣に乱れを呈する者を同定し,その後,睡眠習慣の安定化を目的とした介入研究を行った (約80名) .当調査では,各被験者に対して睡眠フィードバックを一定の確率でのみ呈示する介入デザイン (micro-randomized trial) を採用することで,介入指示があった場合となかった場合との間で睡眠行動の比較を可能にした. 結果として,睡眠フィードバックを受け取った場合では,何も通知がない場合に比して,翌日の睡眠時間が最大で1時間程度増加する傾向が認められた.また,特に睡眠の乱れを呈した被験者において睡眠習慣の安定化効果が顕著に表れることを確認した.本研究成果は,健康介入試験におけるreal-world dataの活用を強く支援するものであるとともに,個人適応型の睡眠フィードバックの有用性に関するreal-world evidenceを提供するものである.
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