研究課題
火星下層大気の大気変動が流出する大気の元となる上層大気の大気組成に与える影響を調べるため、本研究では下層・中層・上層大気の組成成分とその変動を探査機のデータから解析した。上層大気の熱圏・電離圏の密度分布を、米国の火星周回衛星MAVEN搭載の質量分析器NGIMSを使用して解析した。観測結果からは、中性大気と電離大気は光化学反応を通して相互に関係し、下層・中層大気の季節変動と太陽極端紫外線フラックスの量に応じて変化していることを明らかにした。また、地表面で生じたダストストーム中にO原子とO2+, O+イオンの密度が減少することを発見した。これらの結果は、宇宙空間へ流出しうるイオンの量と組成比が、下層・中層大気と太陽極端紫外線フラックスの影響を受けて変動する可能性を示唆しており、最大で5倍程度の密度変化、またCO2+/O+に関しては3倍程度の季節変化が起きうる可能性を示唆した。本研究はJournal of Geophysical Research: PlanetsにYoshida et al. (2021)として出版された。また、欧州の火星周回衛星TGO搭載の分光器NOMADを解析し、火星中層大気の一酸化炭素濃度の変動を解析した。また、合わせて一次元光化学モデルでCO大気の変動について渦拡散係数を変更して解釈を行なった。中層大気における循環や擾乱による拡散の度合いを示す指標である渦拡散係数が季節・半球で2倍程度変動することを示唆した。学会発表を行い、論文投稿に向けて準備中である。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定以上に研究を進めることができ、本課題における火星中間圏・下部熱圏・熱圏・電離圏の大気組成の変動解明に貢献できたと考えているため。また、学会発表や学術誌への投稿が見込まれる結果が出ており、海外研究機関とも連携して研究を遂行することができているため、順調に進展していると言える。
火星大気中の一酸化炭素濃度の分布について、より詳細に研究を進め火星大気の循環の季節変化を理解するとともに、欧米の他の衛星観測データを組み合わせることで、中間圏・熱圏の循環をともに解析することができると考えている。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Journal of Geophysical Research: Planets
巻: 126 ページ: -
10.1029/2021JE006926