研究課題/領域番号 |
21J13837
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三島 梨子 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 腸内真菌叢 / Malassezia / mycobiota / 腸内細菌叢 / 乳幼児 |
研究実績の概要 |
乳幼児の腸管内にはカビや酵母などの多様な真菌が存在しており、真菌の種類や組成は年齢により大幅に変化していく。特に生後3ヶ月頃の乳幼児にはMalasseziaと呼ばれる酵母が多く、混合栄養児に比べ完全母乳児ではMalassezia相対量が有意に高かった。しかし、このMalasseziaが乳幼児腸管内に優占する理由やMalasseziaの果たす機能については不明である。そこで本研究では乳幼児腸管内における(1)Malasseziaの定着メカニズムと(2)その機能解明を目的とし、腸内細菌叢や宿主との共生関係を絡めた研究を実施する。
該当年度では、まず生後1~12か月の乳幼児から糞便を、その母親から母乳の回収を実施した。乳幼児糞便については次世代シーケンサーMiSeqによる細菌叢および真菌叢解析を行った。また、回収した乳幼児糞便から細菌および真菌の分離を試みた。細菌についてはBifidobacterium属やBacteroides属細菌が分離された。また真菌に関しては、生後3か月の完全母乳育児の乳幼児からMalassezia globosaの分離に成功した。次に、この糞便由来M. globosaと皮膚由来M. globosa NBRC 101597について生育挙動を比較したところ、腸管内に近い環境(37℃、嫌気条件)において糞便由来M. globosaは皮膚由来のものよりも生育が良いことが明らかとなった。この結果により糞便由来Malasseziaは腸管内での生育に適した能力を獲得している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
糞便中からのMalasseziaの分離に当初計画していたよりも時間を要したため、研究にやや遅れが生じた。Malasseziaは培養温度や培地によって生存率が大きく左右されるため、糞便からのMalassezia分離条件の検討を追加実験として行った。具体的には、乳幼児から糞便を採取した後に研究室まで輸送する際の条件(保存液や輸送時の温度など)の検討を行った。 また直接、糞便液を培地に塗布した場合にMalasseziaのコロニーが形成されづらいことが判明したため、液体培養を一度挟むなどMalasseziaの分離条件についても検討した。該当年度に実施できなかった実験については、次年度に持ち越して実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に分離したMalasseziaを使用して、腸内Malasseziaの定着メカニズムとその機能解明に向けて以下の実験を行う。 【母乳のMalassezia増殖効果の検証】母乳中でMalasseziaを培養し、増殖促進効果について調べる。さらに、母乳にMalassezia増殖促進効果が認められた場合には、ヒトミルクオリゴ糖など成分レベルでの調査も実施する。 【真菌および細菌の共培養】糞便から分離したMalasseziaおよび細菌を共培養して互いの生育応答を観察することで、乳幼児腸管内における真菌と細菌間の共生または競合関係を明らかにする。特に、乳幼児の代表的な腸内細菌であるBifidobacteriumに着目して調査する。 【ヒト腸管上皮細胞を用いた免疫応答試験】Malasseziaとヒト腸管上皮細胞を共培養した際の各種免疫マーカーの発現量を測定することで、Malasseziaが腸管免疫に与える影響および腸管免疫発達への寄与について調べる。
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