研究実績の概要 |
実験1ではBRAF変異によるPGE2の産生亢進を介したIDO1発現経路を検証するために, イヌ膀胱癌細胞株3株を用いて, PGE2経路におけるPGE2受容体阻害抗体によって阻害した. その結果, 有意にIDO1遺伝子の発現が低下することが明らかになった. 実験2ではイヌ膀胱癌細胞株が高発現するIDO1によるイヌ免疫細胞への作用を検証するために, イヌ膀胱癌細胞株とイヌT細胞を共培養し, IDO1阻害剤 (Epacadostat) を添加した. その結果, TGF-α/IFN-γの遺伝子発現が有意に上昇し, 細胞傷害性T細胞の細胞数も有意に増加した. 実験3では実験2で実証されたIDO1による抗腫瘍免疫増強作用のin vivo抗腫瘍効果を検証するために, NOGマウスに, イヌ免疫細胞を移植し, イヌ化マウスを作製した. 作製したイヌ化マウスにイヌ膀胱癌細胞株を皮下移植して, 担癌マウスモデルを作製し, IDO1阻害剤 (Epacadostat) を投与した. その結果, 投与群はcontrol群に比べて, 有意に腫瘍径が減少した. さらに, 採材した腫瘍組織に浸潤する免疫細胞を解析するため, CD8 およびFoxp3のIHCを実施した.その結果, Epacadostat投与群はcontrol群に比べて, 有意にCD8陽性細胞が増加し, 有意にFoxp3陽性細胞が低下した. 実験4では実験3によりin vivo抗腫瘍効果が実証され, 正常犬1頭を用いた安全性試験にて重大な副作用が発生しなかったため, イヌ膀胱癌に罹患した対象症例に対し, Epacadostat投与を行う臨床試験を実施した. 現在3頭が臨床試験に参加しており, 一般臨床検査で副作用は認められていない. 超音波検査により投与後の腫瘍径の変化を評価したところ, 1頭がPR, 残り2頭が縮小傾向のSDである.
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