研究課題/領域番号 |
21J13957
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武井 勇樹 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 超新星 / 質量放出 / 輻射輸送 |
研究実績の概要 |
大質量星がその一生を終える際に引き起こされる超新星爆発は、親星の質量や星周環境によって多様な観測的特徴を示す。その中でも、水素の輝線幅が狭いIIn型超新星は密度の高い星周物質が特徴であり、超新星噴出物が星周物質に衝突して相互作用することで極めて明るく光り輝く。IIn型超新星の観測から、星周物質の密度は通常の定常的な恒星風モデルでは説明できないほど高いことが分かっており、形成過程は未だに大きな謎である。本研究課題では星周物質の密度構造を決定するべく、光度曲線モデルを構築している。星周物質の密度構造を決定することで、爆発直前の活動に決定的な制限を与えることができるため、密度構造を強く反映する光度曲線のモデリングは極めて重要である。
高密度な星周物質は恒星風モデルでは説明できないため、親星が爆発直前に大規模な質量放出を起こしていると考えられており、実際にその現象が観測されている。本年度は、親星からの爆発的な質量放出モデルと、その後の超新星の光度曲線モデルを組み合わせ、爆発直前から爆発後まで系統的に数値計算する枠組みを構築し、オープンソースコードCHIPSとして世界へ公開した。CHIPSによって、IIn型超新星の観測的特徴を再現すると同時に、星周物質との相互作用によって光る突発天体の特徴も再現できることがわかった。また、IIn型超新星の観測例とCHIPSによる計算結果とを比較し、我々が構築した枠組みによって説明できることも示した。この成果をまとめた論文がThe Astrophysical Journalにて受理された (Takei et al. 2022)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は光度曲線モデルを構築した上で実際のIIn型超新星の観測データと比較することまでを計画していた。上記論文Takei et al. (2022) において、SN IIn 1998Sの観測データと比較し、光度曲線を再現できることまで確認することができたうえ、多色光度曲線まで再現できることも示したため、概ね当初の計画通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、様々なIIn型超新星の観測データと比較してモデルの検証をして修正も加えた上、JWSTの観測データと比較することを目標としていた。JWSTは打ち上げが遅れ、当初の計画通り研究は進まないことが考えられるため、まずはIIn型超新星のデータとモデルの比較を行うことと、モデルで置いている仮定を取り払い、更に適用範囲を拡大させることを目標とする。
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