大質量星はその進化の最後に超新星爆発を起こし、明るく光り輝く。超新星は観測的特徴によって分類されるが、スペクトル中に水素の狭い幅の輝線が存在する超新星は特にIIn型と呼ばれる。IIn型超新星の親星には高密度な星周物質(CSM)が付随していることが特徴であり、このCSMは従来の恒星風モデルでは説明できないほど高密度であることが判明している。理論的にも未解明であり、観測も明るいものでない限り難しい恒星進化の末期の部分へは、超新星の光度曲線から迫ることができるため、本研究課題は意義がある。 本研究課題の初年度では、高密度なCSMを定量的に説明するためのオープンソースコード「CHIPS」を開発した。その結果、IIn型超新星の親星に付随するCSMの質量は、親星の外層へのエネルギー注入によって説明できることが分かった。一方で、近年発見数が増加しつつあるIbn型超新星(スペクトル中に水素輝線がなく、ヘリウムの狭い幅の輝線が存在する)やIcn型超新星(水素・ヘリウムの輝線がなく、炭素や酸素の狭い輝線が存在する)の親星の進化過程は未だ謎に包まれている。本年度はIbn/Icn型超新星になりうる親星へCHIPSが適用できるようにアップデートを行うことに注力した。まずは水素外層が全て剥がされるような状況を想定し、恒星進化コードMESAを用いて親星を作成した。親星へエネルギー注入を行うことでIbn型超新星で見られるCSMの質量が再現されることを確認した。また、前駆天体の光度曲線の計算も行った。申請者は現在この結果で論文を執筆中である。
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