研究課題/領域番号 |
21J13970
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
塚本 智仁 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
キーワード | ゲノム編集 / CRISPR / Cas12a / 感染防御 / B型肝炎ウイルス / HBV / アデノウイルスベクター / 遺伝子治療 |
研究実績の概要 |
CRISPR-Cas9は、ウイルスゲノムを切断することで感染を抑制可能であることから、感染症に対する新たな治療法として注目されている。特にB型肝炎ウイルス(HBV)によって発症するB型肝炎では、既存の薬剤でHBVゲノムを排除することは極めて困難であることから、HBVを完全に排除可能なゲノム編集ツールの開発が期待されている。 ゲノム編集タンパク質であるCas12aは、特異的な二本鎖DNA切断活性に加えて、配列非特異的な一本鎖DNA切断活性を有する。他方でHBV粒子内のゲノムは、不完全環状二本鎖DNAであり、一本鎖DNA領域を有している。したがって、Cas12aはHBVゲノムの二本鎖DNA領域を切断すると同時に、一本鎖DNA領域を切断することにより、効率良くHBVゲノムを排除できる可能性を秘めている。そこで本研究では、HBV感染モデルにおいて、Cas12aがHBVゲノムを効率的に排除可能か検討することとした。 Cas12aはCas9と比較してゲノム編集効率が低いことが問題となっていることから、HBVを効率的に排除するためにはCas12a自身のゲノム編集効率を向上させる必要がある。そこで、本年度はCas12aによるHBV排除の検討に先立ち、Cas12aの性能を向上させることによってゲノム編集効率の改善を試みた。これまでの報告から、Cas12aのゲノム編集効率が低い原因の一つとしてCas12aの核局在性が不十分であることが明らかとなっている。そこで、既報に則りCas12aに核局在化シグナルを追加付与することで核局在性の改善を試みたところ、Cas12aの核局在性の向上およびゲノム編集効率の著しい改善が認められた。来年度はこの改良型Cas12aをアデノウイルスベクターに搭載し、HBVの排除に関する検討を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、B型肝炎ウイルス(HBV)ゲノムを効率的に切断するため、Cas12a自身の性能向上に関する検討を行い、より優れたゲノム編集効率を有する改良型Cas12aの作製に成功した。本年度の検討により、HBVゲノムを切断するために必要なツールの準備が完了した。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は、今年度作製に成功した改良型Cas12aおよびB型肝炎ウイルス(HBV)を標的とするgRNAの共発現カセットをアデノウイルス(Ad)ベクターに搭載する。なおCas12a搭載Adベクターは、我々の研究室で開発済みのCas12a搭載Adベクター高効率回収法によって調製する。続いて、Cas12aがHBVゲノムを効率的に切断し、子孫ウイルスの産生を抑制可能かについて検討する。子孫ウイルスの産生量に関しては、Cas12a搭載Adベクターを作用させた培養細胞(HepG2-NTCP)にHBVを作用させ、培養上清中のHBV抗原タンパク質の量や細胞内のプレゲノムRNAの量をELISA法やqRT-PCR法によって評価する。培養細胞で有望な結果が認められた場合、さらにHBV感染モデルマウスを用いてin vivoでのHBVに対する治療効果を検討する予定である。
|