本研究はフコシル化ハプトグロビン(Fuc-Hp)に対する次世代型糖鎖抗体10-7G mAbがハプトグロビン前駆体(proHp)も認識することから発展した研究であり、1. Fuc-Hpのバイオマーカーとしての意義、2. proHpの生物学的機能の2点の解明を目的としている。昨年度までに以下の成果を得ている。 1. これまでの研究でFuc-Hpは肝転移で増加することが明らかになっている。10-7G値が画像に見えない肝転移を捉えるかを検討するためProspective/retrospective studyを実施し、その一部を学会報告した。 2. これまでの研究でproHpはがん微小環境で免疫細胞から分泌されることが分かっている。proHpの生物学的機能を知るため、proHpの過剰発現株やノックアウト細胞を作成し、解析を行った。その結果、これまでに報告のないproHpの新たな生物学的機能が見出され、現在論文にまとめている。またヒトproHpを全身性に発現するトランスジェニックマウスを作成し、proHpの病態生理における意義を検討してゆく予定である。 3. 今後の10-7G値の臨床検査としての応用へ向けた企業との共同研究が進行中で、これまでの実験室スケールのELISA測定から自動測定装置への応用を進めた。そして多数の臨床検体の血中10-7G値を測定し、疾患バイオマーカーとしての新たな意義を探索した。
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