研究実績の概要 |
二酸化炭素を還元する自己光増感型の触媒として世界最高の耐久性および触媒活性を有するイリジウム錯体の構造をもとにして、新規の自己光増感型の金属錯体触媒および金属錯体触媒とタンパク質と複合化させる人工金属酵素の開発に取り組んだ。イリジウム錯体と同様の配位子をもつルテニウム錯体も非常に耐久性が高い触媒として機能した。ルテニウム錯体の触媒活性は144時間持続し、ギ酸および一酸化炭素生成に関する触媒回転数の合計は796に達した。これは二酸化炭素を還元する自己光増感型の触媒としてはトップクラスの性能である。また、イリジウム錯体とタンパク質を複合化させて人工金属酵素を調製し、水中かつ高効率で二酸化炭素を還元できる人工金属タンパク質の創製を目指した。タンパク質としてはエルシニア菌由来のヘム獲得タンパク質(HasAypt)に着目した。また、イリジウム錯体がタンパク質内部に効率的に取り込まれることを志向して、HasAyptヘム結合部のアルギニンをグリシンに変異させたタンパク質(HasAypt(R40G))を調製した。HasAyptR40Gを含む水溶液に対してイリジウム錯体を滴下したのちに半透膜に入れ一晩透析した。得られた溶液の紫外可視吸収スペクトルを測定した結果、イリジウム錯体がHasAypt(R40G)に取り込まれていることが示唆された。その溶液を用いて二酸化炭素の光還元反応を行なった。犠牲剤としては1,3-ジメチル-2-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾイミダゾールのフェニル基にカルボキシル基を導入して水溶性をもたせた化合物のを用いた。その結果、少量ではあるが二酸化炭素の還元生成物としてギ酸が得られ、このときの触媒回転数は18だった。
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