研究課題
本研究では、報告例がごく僅かであるZ型テルペン生合成酵素の発見から、新規生理活性物質の発掘への展開を目指す。申請者らは、既知酵素との類似性のない新型の「Z型環化酵素」と、Z型二重結合を還元する初めての酵素である「Z型還元酵素」を抗酸菌から見出しており、両酵素の同定を第一の目標とする。加えて、結晶構造や変異導入実験を行い、立体構造や活性部位モチーフを明らかにする。その後、Z型環化・還元酵素を基にゲノムマイニングを行い、新規性の高いテルペンを数多く見出す。見出された新規テルペンについては生理活性を解析し、有用なテルペンを新たに発見する。これによって、「生合成的に新規性の高い天然物の探索→新規性の高い酵素の発見→新規生理活性物質の発見」の流れの有効性を示す。Z型還元酵素の研究は、候補となる酵素遺伝子を既に見出していたため、これを大腸菌発現ベクターにクローニングした。酵素合成した予想基質と大腸菌組換え型の精製酵素とを反応させたところ、酵素活性が検出された。加えて、マイコバクテリア発現ベクターを用いてマイコバクテリアで発現させ、脂質成分の質量分析を行ったところ、Z型二重結合が還元された生成物が検出された。従って、Z型還元酵素を同定することに成功した。一方、Z型環化酵素の探索をショットガンクローニングによって精力的に進めた。酵素活性を示す大腸菌ライブラリーからのコロニーの絞り込みを進めたが、酵素活性が安定して検出されなくなってしまった。再スクリーニングや培養条件など様々な条件を検討したが、改善できなかった。現在、方針を転換してマイコバクテリア発現系を用いたショットガンクローニング及びNativeな酵素精製を検討している。
2: おおむね順調に進展している
Z型還元酵素の一次構造を同定できたため。Z型環化酵素の同定に関してはショットガンクローニングによる探索が難航したが、酵素精製による探索の目途が立ったため。
1)Z型環化・還元酵素の同定とX線結晶構造解析:Z型還元酵素は既に一次構造を同定している。Z型環化酵素は当初予定していたショットガンクローニングが難航したため、酵素精製により探索を進める。両酵素の一次構造が同定でき次第、X線結晶構造解析を開始する。結晶構造は酵素のみのアポ型と基質アナログ結合型の各々を決定し、変異導入実験等と合わせて活性部位モチーフを明らかにする。酵素精製を新潟大学で行い、結晶化・X線解析を京都大学・藤橋雅宏博士の指導のもと行う。2)Z型環化・還元酵素のゲノムマイニング:一次構造の類似性が低いホモログ酵素を様々な生物種から各々10種類ほど取得し、酵素反応物のGCMS解析により生成物を同定する。3)生理活性試験:Z型環化・還元酵素による生成物の生理活性(抗ガン、抗菌など)を解析する。ゲノムマイニングで新規化合物が得られ次第、そちらに関しても解析を開始する。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
The FEBS journal
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10.1111/febs.16412
https://www.niigata-u.ac.jp/news/2022/107413/