研究課題/領域番号 |
21J14120
|
研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
大内 翔平 宇都宮大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
キーワード | MRI / 深層学習 / 撮像高速化 / 高画質化 / 圧縮センシング / 再構成 |
研究実績の概要 |
磁気共鳴映像法(MRI)は、長時間の撮像が必要であり、撮像の高速化が求められている。近年では、MRIの画像再構成処理に深層学習を導入して、撮像および再構成時間の高速化と、画像の高品質化を図る手法が提案されている。一方で実際のMRIでは、装置特性を要因とする位相の歪みが発生するが、位相情報を含んだ画像の再構成に対応した手法は少なく、位相の複雑さは再構成像の品質に影響する。本課題では、MR画像の位相歪みに頑健となる深層学習再構成法を提案し、その特徴を明らかにする。また、MR画像の分解能を評価するCNNを開発して、再構成像の新たな品質評価法を検討する。令和3年度は、位相に頑健な再構成法の画像品質の向上手法の提案や既存手法との比較による提案法の特徴調査および、分解能評価CNNの初期的検討を行った。 位相に頑健な再構成法では、MR信号の間引きパターンの工夫によって複素画像の実部と虚部を独立に再生し、実関数用のCNNで再構成を行う。この際、実部像と虚部像が有する特徴に着目した、学習時とテスト時のデータ拡張法を提案した。検討の結果、本手法は、画像細部の表現性能の向上や、アーチファクトの減少に寄与しており、既存手法と比較して複雑な位相歪みに対しても頑健であり、位相分布の微小な変化を良好に復元できた。 また、既存の多重解像度解析手法と複数のCNNを併用した、各周波数帯域をグループごとに学習する新たな位相対応型のCNN再構成法を提案し、コントラストの変化が小さい画像細部の表現性能の向上を確認した。 また、MR画像の分解能を評価するCNNを提案してノイズ除去像や再構成像の分解能評価を行った。現時点での性能を評価した結果、提案法では、既存の定量的評価法や目視評価に近い評価を行える可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
位相に頑健な再構成法については、新たな画質向上手法の検討および、本手法の特徴の調査を中心に行った。本研究では、間引きパターンの作成時に一定の条件を付すことで、複素画像から実部像と虚部像を独立に再生して、U-Netを基本とした実関数用CNNで再構成を行う。この際、分離された実部像と虚部像は正と負の値を有するため、符号を入れ替えて輝度を反転した画像を生成できる。これは、CNNの学習の際に用いられるデータ拡張の処理に相当し、オリジナルの輝度を持つ画像との併用で学習枚数を倍増できる。また、テストの際にも同様に輝度反転画像を併用して、推定精度の向上を図ることができる。本手法の導入により、再構成像の鮮鋭度が向上した。また、既存手法と比較して、提案法では被写体の細部構造の平滑化が少なく、明瞭に復元できる傾向にあることが分かった。現在、これまでの成果の論文投稿に向けて準備中である。 多重解像度解析手法とCNNを併用した新たな再構成法については、再構成手法の考案と有効性の確認を行った。間引き信号から生成した画像の多重解像度解析による展開像は、情報の保存の程度が周波数帯域ごとに大きく異なる特徴がある。この点に着目して、展開像を周波数帯域ごとに複数のグループに分割し、各グループを別個のU-Netで再構成する手法を考案した。シミュレーションの結果、本手法では小脳のようなコントラストの変化が微小となる領域において高い復元性能が示され、有効性を確認できた。 MR画像の分解能評価を行うCNNについては、MR画像の信号空間の帯域制限率を基準として、入力画像の相対分解能を評価するCNNを提案し、提案法の実用性を検討した。その結果、実際に圧縮センシング再構成やノイズ除去を行った画像において、既存の定量的評価手法や目視による評価と同様の傾向を示すことが分かった。以上より、本年度の研究はおおむね順調に推移している。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況を踏まえて、今後は各手法について以下の通りに研究を進める方針である。 (1)位相に頑健な再構成法では、SWIやQSMなどの位相情報を活用して生成する画像を対象とした再構成および提案法に適した間引きパターンの特徴について調査を行う。 (2)多重解像度解析手法を組み合わせたCNN再構成法では、グループ分割方法の見直しや、CNN構造の改良を行う。 (3)分解能評価CNNに関しては、帯域制限方法の改良や多重解像度解析手法の導入を検討して、評価精度を高めたうえで、様々な画像に対して分解能評価を行い、既存手法との比較を通して本手法の特徴を明らかにする。また、本手法をCNN再構成法の損失関数として導入可能であるかを検討する。
|