研究課題/領域番号 |
21J14152
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 拓海 東北大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
キーワード | 自然言語処理 / 論文執筆支援 / ヒューマンコンピュータインタラクション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、人とのインタラクションを考慮した執筆支援システムの構築のための数理的な方法論を解き明かすことである。特に、本研究では非英語母語話者の英語論文執筆支援に焦点を当てている。特別研究員の申請時点から採用までの期間に、これまでの研究成果を応用し、人が書いた文章に対して代替表現を生成する言語生成モデルを搭載した執筆支援システムを構築した。本年度は、準備期間中の研究成果を踏まえ、非英語母語話者の執筆方法及び、言語生成モデルとのインタラクションを知ることを目指した研究に取り組んだ。 近年、言語生成モデルの性能は非常に向上しているものの、誤りを含む文が生成されることもある。そのため、言語生成モデルを搭載したシステムでは、最終的には人がモデル生成結果を評価し、システムの提案を採用するかどうかを決める必要がある。しかしながら、言語生成モデルの生成能力に関する研究が中心であり、人がどのようにモデルの出力を判断し執筆支援ツールを使用するかということは十分に調査されていない。特に、非英語母語話者を対象にした調査は、ほとんど取り組まれていない。 そこで、まずは言語生成モデルの提案に対する非英語母語話者の評価方法や信頼形成要因の調査を行った。具体的には、日本人の研究者や学生に執筆支援システムを実際に使用して、英語執筆課題に取り組んでもらう実験を行った。その作業の画面収録やインタビューによりデータを収集し分析を行った。現在、この分析の結果をまとめ、論文誌への投稿を目指している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特別研究員の申請時点から採用までの期間に、これまでの研究成果を応用し、人が書いた文章に対して代替表現を生成する言語生成モデルを搭載した執筆支援システムを構築した。当初の研究計画では、執筆支援モデルの改善に関して研究を行う予定であったが、大規模言語モデルの発展により、執筆支援の幅が広がると共に様々な執筆支援ツールも開発されてきている。そういった分野の発展と、採用までの期間の研究成果を踏まえ、一年目は、当初の研究計画を変更し執筆支援システムと非英語母語話者のインタラクションに注目した調査を行った。調査はおおむね順調に進行していると自己評価している。さらに、本年度の研究から、当初の研究計画の改善点や今後の研究の方向性も見えてきている。
|
今後の研究の推進方策 |
本課題2年目は1年目に得られた知見をもとに、モデルと執筆支援システムの全体の改善に関する研究に取り組む。 まず、1年目の調査や最近の関連研究により非英語母語話者の英語での執筆プロセスや執筆支援システムとのインタラクションに関する知見が得られてきている。特に、非英語母語話者の執筆において機械翻訳が有用かつ、よく使用されていることがわかってきた。そのため、機械翻訳の利用を考慮したモデルの設計を行っていくことも検討している。 また、英語力が低い非英語母語話者はシステムからの提案を適切に評価し選択するのに苦労していることがわかってきた。執筆支援モデルの性能向上とともに、提案の選択を支援する仕組みの検討や、既存のモデルの説明性に関する技術をシステムに適用し、その有用性について調査することも検討している。
|