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2021 年度 実績報告書

非平衡な[1]ロタキサン型熱/力学センサ分子の開発とそれによる材料内イメージング

研究課題

研究課題/領域番号 21J14199
研究機関東京大学

研究代表者

宮岸 拓路  東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2021-04-28 – 2023-03-31
キーワードシクロデキストリン / 連結型ロタキサン構造 / 蛍光材料 / 凝集誘起発光増強
研究実績の概要

本研究では非平衡な[1]ロタキサン型センサ分子の開発を志向しており、令和3年度の研究計画は超分子構造の変化を発光特性に変換する分子の創製である。この目的を達成するために、凝集誘起発光(AIE)特性を有する色素と、ソルバトフルオロクロミズムを示す色素の包接/非包接体をそれぞれ合成し、その発光特性を議論した。
AIE特性を有することで知られるテトラフェニルエチレン(TPE)は、励起状態における分子運動が原因で無輻射失活が速く、溶液における蛍光量子収率が低いことが知られている。ここでは、蛍光量子収率を向上させるため、TPEに対して完全メチル化αシクロデキストリン(PM α-CD)からなる[1]ロタキサン構造を導入することで分子運動を抑制することを目指した。結果として、[1]ロタキサン構造の導入によりTPE骨格が剛直化することで無輻射失活が遅くなり、蛍光量子収率が最大で15倍程度向上することが明らかとなった。さらに、[1]ロタキサン構造の導入が溶解性や光耐性なども向上させることも合わせて明らかにした。
以上に加えて、ソルバトフルオロクロミズムを示すドナー-ブリッジ-アクセプター分子の包接/非包接体を合成し、その発光波長を比較することで発光特性に対する[1]ロタキサン構造の影響を定量的に評価した。その結果、この分子では超分子構造の変化に伴って発光波長が変化していくことが明らかとなった。また、包接/非包接体間の変換が遅いことを利用してそれぞれの超分子異性体を単離し、その光物性を比較することで励起状態のブリッジ部位に対する溶媒和を定量化することにも成功した。その結果、特にハロゲン系溶媒において強い溶媒和が形成されることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、完全メチル化αシクロデキストリンとフェニルアセチレンからなる[1]ロタキサン構造の包接/脱包接現象を発光特性変化に繋げることを目標としており、複数の戦略に基づいてこの課題に取り組んだ。まず、包接/脱包接による蛍光のオン-オフを志向して、テトラフェニルエチレン部位を持つ[1]ロタキサンを合成した。結果として当初の狙い通り、この分子は包接によって15倍程度発光効率が向上することが明らかとなった。さらに、包接/脱包接を蛍光色の変化に繋げるためにドナー-ブリッジ-アクセプター構造を有する[1]ロタキサンを合成し、この分子が包接構造の変化に伴って蛍光スペクトルが変化することを明らかにした。以上のように、当初の目標を2つの異なる戦略に基づいて達成することができたため、本研究計画は順調に進展している。

今後の研究の推進方策

次年度は、本年度得られた[1]ロタキサン型色素の包接現象を熱刺激や力学刺激と連動させることで、センサ材料として応用することを目指す。熱刺激に関しては既に予備的なデータが得られているため、まずは熱刺激を記憶するセンサ分子の開発を試みる。力学刺激についても、特に本年度得られたソルバトフルオロクロミズム型の色素を利用して、力学刺激を後から検出する分子の実現を目指す。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Linked Rotaxane Structure Restricts Local Molecular Motions in Solution to Enhance Fluorescence Properties of Tetraphenylethylene2022

    • 著者名/発表者名
      Miyagishi Hiromichi V.、Masai Hiroshi、Terao Jun
    • 雑誌名

      Chemistry - A European Journal

      巻: 28 ページ: e202103175

    • DOI

      10.1002/chem.202103175

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Solvatofluorochromic Contrast with Supramolecular Stereoisomers Using Linked Rotaxane Structures to Investigate Local Solvation in Excited Donor-Bridge-Acceptor Systems2022

    • 著者名/発表者名
      Shimada Sotaro、Miyagishi Hiromichi V.、Masai Hiroshi、Masui Yoichi、Terao Jun
    • 雑誌名

      Bulletin of the Chemical Society of Japan

      巻: 95 ページ: 163~168

    • DOI

      10.1246/bcsj.20210354

    • 査読あり
  • [学会発表] ロバストな発光特性を指向した連結型ロタキサン構造によるテトラフェニルエチレンの分子運動抑制2022

    • 著者名/発表者名
      宮岸 拓路, 正井 宏, 寺尾 潤.
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会
  • [学会発表] Improvement of optical properties of fluorescence dyes with C=C double bonds by a linked rotaxane structure.2021

    • 著者名/発表者名
      Miyagishi, H.; Masai, H.; Terao, J.
    • 学会等名
      Pacifichem2021
    • 国際学会
  • [学会発表] 多様な溶媒環境における発光効率向上を指向した[1]ロタキサン型蛍光色素の開発2021

    • 著者名/発表者名
      宮岸 拓路, 正井 宏, 寺尾 潤.
    • 学会等名
      第18回ホスト-ゲスト・超分子化学シンポジウム

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公開日: 2022-12-28  

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