研究課題/領域番号 |
21J14251
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山手 駿 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | プロトン伝導性セラミックス / 固体酸化物形燃料電池 / 技術経済性評価 |
研究実績の概要 |
5 kW規模プロトン伝導性セラミック燃料電池(Protonic Ceramic Fuel Cells, PCFCs)モジュールを対象とした製造プロセスを開発し、各種セルデザイン(電極電解質材料、膜厚)や製造プロセスにおける技術オプションに対する感度分析ならびにシナリオ分析を通じ、モジュール製造コストへの波及効果を調査した。結果として、焼成工程における連続炉の機器コスト、またそれに付随する用役費や人件費がモジューコストにおいて支配的であることが判明した。また、電極材料について、一例としてカソード材料を従来のLSCF(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3)からLBC(La0.6Ba0.4CoO3)へと変更した場合、発電性能の向上に伴い、モジュール構成セル枚数低減によるモジュールコストの大幅な低減が示唆された。薄膜電解質の導入は性能の観点から有益となる一方、成膜プロセスについて湿式(スクリーン印刷)と乾式(スパッタリング)を比較した場合、後者では設備コストが高く、モジュール製造コストで不利となることが示唆された。 また、社会実装の見地から、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cells、SOFCs)の固体酸化物形電解セル (Solid Oxide Electrolyzer Cells、SOECs)としての利用を想定した高温水蒸気電解による水素製造システムについても併せて検討し、設備コスト低減に対しての技術シナリオを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アノード支持平板型PCFCに対するモジュール製造プロセスの設計は今年度の検討で概ね完了した。当製造プロセスに基づき材料費、機器費、用役費、建設費、人件費の積上げによりモジュールコストを算出した結果、支配因子は電極電解質の積層膜製造工程であることが判明した。以上の課題解決のための技術シナリオとして、焼成工程において共焼成(支持電極、活性層、電解質の同時焼成)を想定した場合、連続炉削減によるモジュールコストの低減が明らかとなった。また、製造プロセスの変更に加えてセルデザインについても検討したところ、電極電解質材料を変更(ここではカソード材料のLSCFをLBCへと変更)した場合、出力密度の向上に伴いモジュール構成セル枚数が大幅に減少し、共焼成を上回るコスト削減ポテンシャルを有することが明らかとなった。以上の製膜工程は湿式法(スクリーン印刷等)での製造を仮定しており、乾式プロセス(スパッタ成膜)を導入した場合には機器コストに起因した大幅なモジュールコスト上昇が示唆された。 これら当初の予定に加え、燃料電池の社会実装の一例として、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cells、SOFCs)を電解セルとして利用した高温水蒸気電解による水素製造システムの技術経済性評価も併せて実施した。 以上の進捗状況を総合的に勘案し、区分の通り本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(令和4年)は本年度得られた製造プロセスに対する知見に基づき、発電システムの設計を含めた発電コストについて技術経済性評価および環境影響評価を実施する。また、セルデザイン、製造プロセス、運転条件の各階層に対する感度分析やシナリオ分析が発電コストへ与える波及効果についても検討する。 また、本年度実施した技術経済性評価によってモジュールコストの支配因子として明らかとなった製膜工程に対し、湿式製膜時の低温焼成による連続炉コスト削減への寄与を目指すとともに、電気化学測定によって単セルとしての性能を検証する。 他方、乾式プロセスについても発電原理確認としてPLD(Pulsed Laser Deposition)を用いることが可能であり、支持電極上に電解質層を積層したセルを開発し、達成可能な高性能セルの探索も併せて進める予定である。
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