研究課題/領域番号 |
21J14316
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
駒田 夏生 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 熱帯雨林 / 林冠生物学 / 着生植物群集 / 節足動物群集 / 生物多様性 / 東南アジア熱帯 / ランビルヒルズ国立公園 / 懸垂土壌 |
研究実績の概要 |
維管束着生植物(以下、着生植物)は、宿主木上で非寄生的に育つ植物であり、熱帯雨林で多様性や量が高い。また着生植物は樹上空間においてパッチ状の群落(着生植物パッチ)を作って生育し、しばしば懸垂土壌と呼ばれる腐植質を保持する。このような懸垂土壌は樹上性の節足動物群集の重要な生息場所となることが知られている。熱帯林の樹上空間に広がる生態系は、陸域においては最も生物多様性が高いとされ、節足動物群集は種数・個体数の観点から主要な構成要素である。一方で、東南アジア熱帯では、着生植物群集の森林内での分布特性や、着生植物パッチの特性が節足動物群集の種構成や多様性に及ぼす影響が未解明である。 令和3年度は、海外渡航制限により、節足動物を対象とした野外調査を行うことができなかった。このため、2019年までの調査により得られた着生植物の分布データを解析することにより、東南アジア熱帯のマレーシア領ボルネオ島に位置するランビルヒルズ国立公園の着生植物群集の多様性・生態に関する基礎的知見の蓄積を目的とした研究を進めた。特に、以下に示した内容の論文が受理・公開された。 宿主木の個体サイズが単一宿主木上の着生植物の種多様性およびアバンダンスに及ぼす影響を、宿主木のDBH変化に伴う、①着生植物の出現確率、②着生植物の種数、③着生植物の個体数、④着生植物の累積種数との変化を解析した。この結果、着生植物の出現確率は、DBH > 40 cm の宿主木で50%を超え、着生植物と着生植物個体数はDBH増加に伴い指数関数的に増加し、特にDBH40㎝付近でその増加速度が大きいことが分かった。また、着生植物種のうち過半数は、DBH > 60 cm以上の宿主木でしか見られないことが明らかとなった。本論文は、査読付き国際誌Tropicsに受理され掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和3年度は、ロープワークテクニッ クを用いた樹上調査をマレーシア領ボルネオ島のランビルヒルズ国立公園にて行い、植生タイプの異なる着生植物パッチが保持する懸垂土壌から節足動物の抽出および、DNAバーコーディングによる種判別を行う予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による渡航制限により、 ランビルヒルズ国立公園での現地調査を行うことができなかった。このため、当初の予定を一部変更し、これまでの現地調査により得られた着生植物群集の分布に関するデータを解析し、論文の執筆、投稿を行った。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の4月~8月にかけては、着生植物が保持する懸垂土壌の採取・定量・分析や、懸垂土壌を利用する節足動物の採取等に関する手法の検討を行う。また、着生植物群集の分布データを解析した結果を国際学会で発表し、国際誌に投稿予定の論文を準備する。令和4年度9月にはランビルヒルズ国立公園において、着生植物パッチを採取し、懸垂土壌内の節足動物を抽出する。得られた節足動物の標本を外部形態およびDNAバーコーディングにより種判別し、着生植物パッチの微環境との関係を解析する。
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