研究課題/領域番号 |
21J14346
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
杉山 博信 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
キーワード | メタノール合成 / 触媒 |
研究実績の概要 |
メタノールはC1化学の原料として用いられる他,燃料添加剤や水素キャリアとして注目され,その需要は年々増加している.二酸化炭素の資源利用が待望される昨今では,二酸化炭素をメタノールへと転換し,資源利用する技術開発は喫緊の課題である.本研究課題では,上述の変換プロセスをより温和な条件(低温・低圧)で行うための触媒開発を目的としている. 本年度は,当初の予定通り二酸化炭素からのメタノール合成反応に対する金属間化合物触媒のスクリーニングを行った.また,準備期間に行っていた一酸化炭素からのメタノール合成反応の反応機構解析において従来触媒とは異なる,負電荷の水素が反応に直接関与し,低温メタノール合成を促進する機構が示唆されたため,より詳細な調査を行った.本研究課題では,一酸化炭素と二酸化炭素それぞれからのメタノール合成反応における負電荷の水素の反応促進効果を最終的には比較することを目指しており,追加調査はその一助となる. 触媒のスクリーニングとしては,La3Pd5Si, Pd2Mo3Nなどの三元系の金属間化合物に焦点を当て,それらの合成とその触媒活性の評価を行った.一部の試料で触媒活性が確認できており,現在さらなる活性向上に取り組んでいる.同時に希土類水素化物上での一酸化炭素からのメタノール合成の反応経路解析を第一原理計算を用いて行った.その結果,負電荷を持つ格子水素が中間体の形成に参加することで反応の活性化エネルギーがおよそ半分にまで減少することが明らかとなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画は二酸化炭素を原料としたメタノール合成反応に対して金属間化合物触媒のスクリーニングを進めることである.当初ターゲットとしていたLa3Pd5SiやLaCuSi等の金属間化合物上では低温での触媒活性を確認するに至らなかったものの,Pd2Mo3NやNi2Mo3Nが150 ℃以下の低温域でメタノール合成活性を示すことを見出した.さらなる活性の向上が今後の課題ではあるが,候補となる物質群が見つかったという点で進展があった.加えて,課題の準備期間に進行中であった希土類水素化物を用いた一酸化炭素からのメタノール合成においては,実験から従来触媒とは異なる反応機構が示唆されたため,本年度に第一原理計算からより微視的な反応機構解析を行った.これにより,負電荷の水素の反応促進効果が明らかとなり,低温メタノール合成に対して負電荷の水素を用いるアプローチの有効性の一例を示すに至った.以上のことから,本年度の進捗状況は当初の計画通りの進展があったと判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究からPd2Mo3NやNi2Mo3N上において低温域でのメタノール合成活性が確認された.そこで今後は上記の物質群(TM-Mo-N, TM=遷移金属)に焦点を当て,合成条件等を最適化することで,低温域でのメタノール合成活性の向上を目指す.加えて,透過型電子顕微鏡を用いた触媒の微細構造観察や比表面積測定などのキャラクタリゼーションを進める.同時に第一原理計算を駆使し,触媒表面の水素の電荷に着目した反応機構解析を計画している.
|