本研究では、安価なNiを用いた高性能なアンモニア分解触媒を開発するために、ペロブスカイト型新規酸窒化物を開発しアンモニア分解反応に対する促進効果や酸窒化物の表面における反応機構の解明を行なった。新規酸窒化物の合成を進める過程において、水素化バリウムと酸化チタンを直接反応させることによって、ヒドリドイオン(H-)を高密度に含有する水安定な六方晶構造を有するh-BaTiO2H0.97の合成に成功した。また、本材料を窒素気流下において焼成すると、H-イオンが窒素イオン(N3-)に置き換わりh-BaTiO3-xNyが得られることがわかった。h-BaTiO3-xNyの化学組成を詳細に分析したところ、h-BaTiO2N0.34□0.66と決定された。本材料にNiを担持した触媒のアンモニア分解活性を評価したところ、酸化物(t-BaTiO3、h-BaTiO3-x)を担体としたNi触媒に比べて著しく高い触媒活性を示した。また、格子N3-種の導入により触媒動作温度が約140℃ほど低温化することがわかった。酸窒化物にNiを担持した触媒は水に暴露する前後において同等の性能を示したことから、酸窒化物担体は水安定かつ優れた促進効果を示す材料であることが実証された。赤外分光法や同位体ガスを用いた実験により、酸窒化物に含まれる格子窒素がアンモニア分解反応に寄与しており金属-担体の界面におけるアニオン欠陥サイトにおいてアンモニア分子が活性化されると考えられる。実際に酸窒化物担体はFeやCoに対しても同様に優れた促進効果を示すことから、酸窒化物の担体表面の活性サイトがアンモニア分解反応に対して支配的に機能することが示唆される。以上の結果から、安定な酸化物の格子酸素(O2-)の一部をN3-種に置換することによって高耐久かつアンモニア分解反応に優れた促進効果を示す担体材料が開発できると期待される。
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