研究課題/領域番号 |
21J14374
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
PENG ZUGUI 東京工業大学, 工学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 人工細胞膜 / DNAナノチューブ |
研究実績の概要 |
本研究では、人工細胞膜とDNAナノチューブを用いた高い生体適合性を有する神経細胞内刺激電極アレイの開発を目指す。計画初年度にあたる本年度では,基盤技術の開発を行った。具体的には、1) ジメチルポリシロキサン(PDMS)上に高い機械強度を有する人工細胞膜の形成、2)長さが制御可能なDNAナノチューブの試作を行った。以下に,それぞれの詳細を述べる。 1) PDMS上に高い機械強度を有する人工細胞膜の形成。ラズマ処理でPDMS表面を親水化処理させ、脂質の自発展開現象を利用して、PDMS表面に均一な脂質二重膜を形成した。形成した人工細胞膜は、PDMSにより支持されているため、高い機械的強度を有していると考えられる。また、プラズマ処理の時間を制御することにより、膜の形成速度や形成した膜の形状をコントロールできることがわかった。 2) 長さが制御可能なDNAナノチューブの試作。DNA鎖置換反応を利用し、異なる長さを持つDNAナノチューブを結合させることで、DNAナノチューブの長さを制御する手法を開発した。原子間力顕微鏡を用いて形状を確認したところ、DNAナノチューブの長さは反応前34.4 nm、反応後64.2 nmで、長さを約2倍にすることができた。またDNAナノチューブの物質透過を評価するために、パッチクランプを用いた電気計測実験系を新たに構築した。結果、作製したDNAナノチューブが電荷を透過させ、導電性を持つことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目的は電極を構成する要素技術である人工細胞膜とDNAナノチューブの開発であった。 人工細胞膜については、ジメチルポリシロキサン(PDMS)上に形成することにより、高い機械的強度を有する人工細胞膜の試作に成功した。また、共焦点蛍光顕微鏡と原子間力顕微鏡(AFM)で作製した人工細胞膜を評価したところ、人工細胞膜の展開速度や形状など特性が支持基板であるPDMSの表面性状に大きく依存することがわかった。これらの知見は、人工細胞膜を電極基板として利用するのに大いに役立つと考えられる。 DNAナノチューブの開発については、電気泳動やAFMによる観察から、長さを自由に制御できることを確認した。さらに、パッチクランプ法を用いてDNAナノチューブの電気計測を検討した。結果として、開発したDNAナノチューブが人工細胞膜に挿入し、イオンを透過させる機能をもつことが判明した。 以上から、現在までの進捗状況について、おおむね順調であると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、初年度に開発したDNAナノチューブをPDMS人工細胞に導入する。DNAナノチューブを人工細胞膜内への導入に際して、疎水分子であるコレステロール分子をDNAナノチューブに導入する必要があるが、コレステロール分子の数や配置が人工細胞膜とDNAナノチューブとの相互作用に与える影響ついてはまだ十分に理解されていない。そこで、共焦点顕微鏡や原子間力顕微鏡を用いて,膜上でのDNAナノチューブの特性を評価していく。 併せて、DNAナノチューブを介した細胞刺激実験の準備を着手する。細胞に対してDNAナノチューブを導入した後、まず蛍光物質拡散法でナノチューブの細胞膜刺入を確認する。次に、細胞を電気刺激し、ガラス管電極刺入法で活動電位を計測する。刺激強度を変え、細胞を発火させる最も効率的な条件を探索する。
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