研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、Acinetobacter baumannii由来LPSに含まれるKdo αグリコシド構造を立体選択的に合成可能な新規α選択的Kdoグリコシド化法のさらなる検証を行った。 具体的には、A. baumanniiが有する構築困難なKdo同士のα(2,5)結合の形成反応に着目し、反応条件の精査を行った。昨年度までに行った検討では、縮合反応の活性化剤としてNIS-TfOHを用い、-80℃という極低温下にて収率良く目的のαグリコシド結合を構築していたが、反応性の低いKdo 5位水酸基との反応においては、比較的温和な本条件では収率良く反応が進行しなかった。そこで、活性化剤を強力な一電子酸化剤であるtris(4-bromophenyl)ammoniumyl hexachloroantimonate (BAHA)に変更し、MeCN溶媒中、0℃でKdo同士のα(2,5)結合の形成を試みた。その結果収率は顕著に向上し、従来法に比べて効率良く、さらに完全な立体選択性で本結合が形成可能であることを明らかにした。 また、供与体の反応性に大きく影響を与えうると考えられた供与体4位保護基の検討を行うことで、本供与体の反応性向上を試みた。その結果、電子供与体の嵩高い置換基であるTIPS基が施された供与体は、従来のAc保護供与体に比べて迅速にKdo αグリコシドを与えることが明らかになった。このことから、4位保護基の電子的あるいは立体的な影響によってKdo供与体の反応性が顕著に向上することが示された。
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