研究課題/領域番号 |
21J14427
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉野 聖人 東北大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | グラフの最小固有値 / サイデル行列 / 等角直線属 |
研究実績の概要 |
最小固有値が-3以上のグラフを複雑さの観点から理解することが一つの目的であった.まず最小固有値に特に条件をつけずグラフに関する基礎的な定理を与えた.これにより,等角直線族への応用が生まれた.具体的なケースで述べれば,最大固有値5以下のサイデル行列と最小固有値-3以上の隣接行列を拡大した行列の間に対応が得られる.加えて,最大固有値3以下のサイデル行列と最小固有値-2以上のグラフのコーンの対応も得た.最大固有値3のサイデル行列は共通角度arccos(1/3)の等角直線属に対応するため,与えた対応の応用として共通角度arccos(1/3)の極大な等角直線属の分類を行った.先行研究として1973年のLemmens氏とSeidel氏による各次元での等角直線属の濃度決定や,2020年のLin氏とYu氏による8次元の極大な等角直線の決定などがしられており,与えた分類はこれらを包含するものである.また関連して,極大な等角直線属の十分条件やさまざまな種類の無限列を与えた.十分条件はサイデル行列の固有値で与えられるものであり,無限列の要素たちはよいスペクトルを持つものである.最小固有値-3以上のグラフの複雑さに戻ると,まずはもっとも簡単だと思われる最小固有値-2以上のグラフに対する複雑さをコンピュータにより決定し,そのグラフから得られる3格子に関するいくつかの性質を明らかにした.さらに,グラフの複雑さは対応する格子の複雑さで定義されるため,いくつかの格子の複雑を決定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は極値組合せ論の結果を応用,あるいは前提にして行われる.そのため,極値組合せ論に関する理解を深めることが一つのタスクであった.現状はその難解さから想定よりは学ぶべき内容に遅れが見られる.しかし,これまでの研究のいくつかの改善策が見つかり,その実行を行なった.これは本研究にも取り入れることができ非常に有用である.そのため遅れを加味しても,理論の全体を理解し深める点からすると十分な結果であるといえる.次にグラフの複雑さの決定問題に関して述べる.グラフの複雑さは,その最小固有値に応じて得られる格子の複雑さによって定義されるのであった.そのため,まずは複雑さの基準を得るために余体積の小さな格子の複雑さの決定を一部遂行した.また,これまでの知識とプログラムを応用することにより進展が見られた.特に最小固有値-2以上のグラフを最小固有値-3のグラフとしてみたときの複雑さを詳しく調べ,複雑さごとにグラフを列挙した.加えて,対応する格子の性質についても明らかにした.また、当初予定していなかった方向へ大きく進展した部分もある.具体的にはグラフとサイデル行列の間に新たな対応を見つけることで,共通角度arccos(1/3)の等角直線族の構造を明らかにした.また,その際に導入した極大性に関する研究を進め,既に出版された.
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今後の研究の推進方策 |
今後の遂行方策としては,引き続き研究計画を実行しつつもその応用にも取り組む.まず,極値組合せ論の部分に関しては引き続き理解を深める.その際,これまでの研究の結果を組み込める部分があるため,それを実行しつつ行う.次に,グラフの複雑さに関する研究では,主に最小固有値-3以上のグラフを調査するのであった.具体的で扱いやすい対象として最小固有値-2以上のグラフをまず扱っていた.これらのグラフの複雑さは決定済みであるが,より詳細な特徴づけを完了させる.これにより最小固有値-2より小さいものに取り組む.まずは,最小固有値-3以上のグラフから得られる3格子の余体積と複雑性の結果の拡張などを遂行することで,研究を進める.最後に最小固有値-3以上のグラフの問題に取り組む中で生まれた応用について述べる.具体的には,最小固有値-3以上のグラフである性質を満たすものと共通角度arccos(1/5)の等角直線族の間に対応を見つけた.これにより,等角直線族の探索などが効率的に行えるようになった.これを用いて,コンピュータによる広範囲の探索を実行することで実際によいものを構成するなどし,等角直線族への応用の一つを与えたい.
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