本研究は,ねじれ振り子型重力勾配計を用いた地震の即時検出に向けて,装置の開発と感度向上を行うものである.ねじれ振り子型重力勾配計は,重力勾配に応じた潮汐力によりねじれ振り子がねじれ回転することを利用しており,現在までにはねじれ回転角度を読み取る光学系の開発を主に行ってきた. 読み取り光学系の主要な雑音の一つに,外部の振動や温度変化に伴う光学系自身の揺らぎがある.この揺らぎを低減するために,本研究ではモノリシック干渉計と呼ばれる,基材に光学素子を直接貼り付ける光学系を用いる計画となっている.さらに,重力勾配計はねじれ振り子の熱雑音を低減するために振り子が4 Kの低温環境に置かれるため,低温で動作するようなモノリシック干渉計である必要がある.そのようなモノリシック光学系は世界初となる. 今年度は,実際に構築する光学系のデザインと,前年度までに開発したアセンブル装置を用いた光学系の一部構築を行った. ねじれ振り子の角度読み取りには,振り子の両端に構築したファブリペロー干渉計の差動信号からねじれ回転を読み取る,差動ファブリペロー干渉計を予定している.一般にファブリペロー干渉計は入射するレーザー光が干渉計の固有モードに一致しなければ干渉計として成立しないため,レンズによってレーザー光を固有モードに近づける必要がある.また入射するレーザー光の方向が干渉計の軸に揃っていなければならないため,入射光の方向を調整する必要がある.こういった光学系を全てモノリシック光学系の基板に収めるデザインを考案した.さらに,入射光学系部分については前年度開発したアセンブル装置を用いて角度調整を行い,基板へ接着した.その結果,入射光の90%以上を干渉計に結合させることに成功し,その後の真空試験においても数日以上に渡り安定している.
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