研究課題/領域番号 |
21J14457
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤井 郁哉 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | フッ化アリール / フェノール誘導体 / 不活性結合活性化 / グリニャール反応剤 / ロジウム-アルミニウム複核金属錯体 / 金属-金属結合 |
研究実績の概要 |
令和3年度は,研究計画調書に記載した「多フッ素置換アレーンのサイト選択的炭素-フッ素結合マグネシウム化反応」および「フェノール誘導体の触媒的炭素-酸素結合マグネシウム化反応」の課題に取り組んだ。「多フッ素置換アレーンのサイト選択的炭素-フッ素結合マグネシウム化反応」においては,基質適用範囲の拡充を行い,多様な置換形式の多フッ素置換アレーンの変換に成功した。さらに,入手容易な多フッ素置換アレーンから非ステロイド抗炎症薬であるFlurbiprofen誘導体や液晶性分子の合成にも達成した。「フェノール誘導体の触媒的炭素-酸素結合マグネシウム化反応」においては,炭素-酸素結合マグネシウム化反応を可能とする酸素原子上の置換基,添加剤,および触媒などを検討することで,フェノール誘導体からグリニャール反応剤の触媒的調製に成功した。しかし,フェノール誘導体とフッ化アリールの還元的クロスカップリング反応に関しては,高いクロス選択性の実現に至らなかった。そこで,これまでに得られた知見をもとに反応条件を一部変更することで,フッ化アリールのマグネシウム化反応,続く同一触媒による(擬)ハロゲン化アリールとの熊田-玉尾-Corriuクロスカップリング反応に成功し,論文投稿に至った。さらに,既に報告しているフッ化アリールの炭素-フッ素結合マグネシウム化反応の反応機構から着想を得て,フッ化アルキルの触媒的マグネシウム化反応を開発した。現在,基質適用範囲の調査や反応機構研究に取り組んでいる。また,エナンチオ選択的反応を志向した新規触媒合成に関しては,様々なアイデアや理論計算をもとにいくつかの候補化合物を設定したが,想定した新規錯体は未だ得られていない。現在は,新たに見出した触媒反応の反応機構研究,新規複核金属錯体の創出,さらに新規触媒反応への展開を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り,「多フッ素置換アレーンのサイト選択的炭素-フッ素結合マグネシウム化反応」および「フェノール誘導体の触媒的炭素-酸素結合マグネシウム化反応」に関しては研究計画調書で想定していた結果が得られている。還元的クロスカップリング反応に関しては,新たに策定した方針や戦略でも高いクロス選択性が見られなかったため,反応形式をマグネシウム化反応に続く熊田-玉尾-Corriuクロスカップリング反応に変更することで高いクロス選択性の実現を達成した。一方で,これら開発した新規触媒反応の反応機構は未だ明らかになっておらず,金属-金属結合の特異な反応性の原因解明には至っていない。また,エナンチオ選択的反応を志向した新規触媒合成に関しては,想定した新規複核金属錯体は得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
まずは,開発した新規触媒反応の反応機構解明を重点的に推し進める。具体的には,理論計算や量論実験,文献調査を通して反応機構に関する知見を集める。解明した反応機構の知見を基に,その他の不活性σ結合変換へと展開することで,分極した金属-金属結合による協働的活性化の一般性を評価する。また,新規キラル複核金属錯体を合成・同定し,それらを用いて代替フロンやPFASsなどに見られる多フッ素置換化合物のサイトおよび立体選択的炭素-フッ素結合マグネシウム化反応を開発し,論文投稿を目指す。本課題については共同研究者と協力して進めていく予定である。
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